地元食材や生産者と出会うグルメ旅
韓国南部の美食エリアで
雄大な自然に恵まれた
韓国の南部には、魅力的な食材がいっぱい。
速水もこみち
1984年8月10日生まれ、東京都出身。2002年に俳優デビュー。韓国南部
韓国の首都圏から、南部の中心地・光州(クァンジュ)までは電車で約2時間半。光州の名物は韓国式のハンバーグ「トッカルビ」や牛肉のチヂミ「ユクチョン」などの肉料理。
ほかにも「韓国の隠れたリゾート」と呼ばれる海南(へナム)、韓国屈指の港町・木浦(モッポ)など食材の宝庫といわれる街が点在する、美食巡りにぴったりのエリア。
名物ストリートや市場を散策
もこみちさんオリジナルレシピ
「海南(ヘナム)」の立ち寄りスポット
もこみちさんオリジナルレシピ
「木浦(モッポ)」の立ち寄りスポット
もこみちさんオリジナルレシピ
速水さんが新たな料理を生み出すべくやってきたのは、韓国の首都ソウルから南へ300km離れた都市・光州(クァンジュ)。グルメが充実した「味の都」として名高いほか、アートやパフォーマンスの世界的イベント「光州ビエンナーレ」が開催されるなど、アートの街としても知られています。
最初に足を運んだのは、光州松汀(ソンジョン)駅から歩いて約5分の「トッカルビ通り」。韓国式のハンバーグ「トッカルビ」の専門店が軒を連ねる、光州を象徴するスポットです。速水さんは「どんな料理なんだろう」と想像しながら散策をスタート。
トッカルビ通りを散策していると、ひときわ賑わう通りを発見した速水さん。そこで偶然開催されていたのは、5日ごとにしか開かれない市場「ソンジョン五日市場」です。地元ならではの肉や魚、野菜を販売する屋台が所狭しと並び、活気にあふれています。
赤、緑、黄色と色とりどりの大きな唐辛子を見て「立派だね!辛そう」と目を輝かせる速水さん。漢方のお茶を飲んだり、イカの天ぷらを試食したりと食べ歩きも楽しみます。市場の最後にたどり着いたのは、一軒のお肉屋さん。「これはなんだろう?さつま揚げのような、ハンバーグのような……」と速水さんの目に止まったのは、お目当てのトッカルビ。さっそく試食してみることに。「ハンバーガーのパテみたいな感じ。でもしっとりとしていて、ちゃんとジューシー。肉の旨味もしっかりと感じられます」と地元グルメに感動。多彩な韓国の食材を目にして、料理へのインスピレーションが湧いたようです。
今回速水さんが作る料理の主役となる食材は、肉料理が有名な光州でも特に人気の「黒豚」。黒豚を使った料理のヒントを得るため、生産者のもとへ向かいます。温かい笑顔で出迎えてくれたのは、農場を運営するキムさん親子。養豚場の中に案内してもらい、元気いっぱいに走り回る黒豚の姿を見て「すごい元気!」と速水さんも思わず笑顔に。
キムさん親子の養豚場では、約1000頭の黒豚を飼育しています。豚の飼料に梅を発酵させたエキスを混ぜることで、餌を消化しやすくなり、豚のストレスが減ることで肉が美味しくなるのだとか。韓国の子どもたちは、お腹が痛いとき母親に梅エキスを飲ませてもらうそうで「うちは家族のように豚を育てることを何よりも大切にしているんです」とキムさん。そんな自慢の黒豚を、キムさんおすすめの炭火焼でいただけることに。「噛み応えがしっかりしているし濃厚ではあるけど、後味がサッパリしていますね」と、速水さんは黒豚の美味しさにほれぼれ。キムさん親子のお話を聞き「愛情たっぷりで育てているのがすごく感じられました」と笑顔で農場をあとにしました。
「アートにも興味がある」と話す速水さんは、光州のアートの街としての一面も知るべく「ペンギン村」を訪れました。1970〜80年代に使われていた日用品の廃材を利用したアートが並ぶ「ペンギン村」は、この辺りに暮らす高齢者の歩き方がペンギンに似ていたことから命名されたのだとか。
壁に飾られたアート作品をじっくりと鑑賞しながら「こういう作り方も面白いな」と目から鱗の速水さん。ハサミを魚の尾に見立てた作品など、使わなくなった道具を巧みに利用したアートに興味津々。数々の作品を見て「僕もボロボロになって使わなくなったキッチンツールをアートにしたら面白いんじゃないかな」と創作意欲が湧いたようです。
続いて「ペンギン村」から少し歩いてやってきたのは、地元出身のメディアアーティスト、イ・イナムさんの展示スペース兼スタジオ「LEE LEE NAM Studio」。彼の代表技法である「動きのある名画」をはじめ、メディアアートから彫刻に至るまでイ・イナムさんのさまざまな作品を鑑賞することができます。
1階のカフェテリアでは、デジタルで描かれた動く水墨画風の絵画が壁一面に。「アートの近くで飲食ができるのはすごいな」と感心する速水さん。その後も2、3階と上がるたび色彩豊かな作品との出合いが待っていました。イ・イナムさんの作品の世界にたっぷりと浸った速水さんは「見るもの全てがすごく新鮮で、収穫が大きかったですね」と大満足。
食とアートに触れた旅で、さまざまなインスピレーションを受けた速水さん。「3つくらいの要素を組み合わせた面白い料理を作ろうかな」とイメージは固まったようです。一体どんな料理が生まれるのでしょうか?
「今回は韓国と日本の要素を組み合わせ、それを洋風にアレンジした料理にしていきます」と包丁を握った速水さん。一品目に作るのは、光州の黒豚を使い、イタリアの伝統料理「ポルケッタ」をアレンジした一皿。黒豚農場のキムさん親子も招いて料理を振る舞います。
豚肉にコチュジャンを塗る様子を見たキムさんは「韓国ではあまりしません」と大胆な調理法に驚きました。肉をグリルで焼きながら、速水さんは「韓国にはコリアンBBQ、日本にはジャパニーズ焼肉があるので、それをマリアージュするイメージで炭火焼にしました」と話します。仕上げのソースにも、醤油を入れることで和のエッセンスを加えます。
完成したポルケッタを食べたキムさん親子は「本当に美味しい!」と大絶賛。「韓国で一度も食べたことがない味です。帰る前にレシピを教えてくださいね」とお茶目に笑います。
速水さんは「噛めば噛むほど甘みと旨みを感じられる黒豚はなかなかないと思うので、初挑戦ですけど美味しく仕上がって良かったです」と料理の出来ばえに満足。韓国と日本、イタリアという3つの要素を融合した自信作ができあがりました。
《作り⽅》
1. 豚バラ肉に塩・胡椒をふる
2. フードプロセッサーに【A】を⼊れて細かく攪拌し、ごま油で軽く炒める
3. 1の豚バラ肉にコチュジャンをぬり、2を乗せたら端から巻いて、たこ⽷でしっかり巻く
4. 3を熱したグリルに置き、アルミシートを被せたら60分〜2時間弱⽕でじっくり焼く
5. ⼩さめのフライパンを熱し、バターを溶かしたらマデラ酒を加え、アルコールが⾶んだら、 バター、醤油、ブラウンシュガーを加え味を整える
6. ⽫に5のソースを注いだら、4の豚⾁を2cmの厚さに切ってのせる
2品目に作ったのは「豚バラ肉の唐揚げ」。日本人が大好きな唐揚げをバラ肉で作り、コチュジャンをベースにしたタレを絡めて韓国風に仕上げた一品です。油でカラッと揚げた唐揚げのサクサク食感と甘辛いソースが絶妙で「ご飯にもお酒にも合いますよ」と速水さん。
キムさん親子も「香ばしくて食感も良いですね!」と大喜び。「私達が愛情を込めて黒豚を育てているように、速水さんも愛情を込めて料理してくれたので本当に美味しくいただけました」と速水さんへの感謝を伝えました。
光州の黒豚を使った料理に初めて挑戦した速水さんは「黒豚が韓国のみなさんに愛される理由がわかったような気がします」と実感。食材だけではなく、その向こう側にいる生産者と触れあうことで思い出深い旅になったようです。
《作り⽅》
1. 豚バラ⾁に【A】の材料を加えてよく揉み、10分程置いておく
2. 【B】の調味料をボールに合わせておく
3. 1の豚⾁に⽚栗粉をまぶし、180℃熱した油でこんがり揚げ、バットに上げる
4. 2のボールに3を加えてよく絡める
5. ⽫にえごまの葉と4を盛り付ける