梅酒の聖地で楽しむおいしいロマン紀行
世界遺産・熊野古道への玄関和歌山県田辺市
世界遺産・熊野古道への玄関
和歌山県田辺市
梅酒の聖地で楽しむ
おいしいロマン紀行
田辺市
和歌山県南部に位置する田辺市は、隣接するみなべ町ととともに国内生産量の約半分を占める梅の名産地。
400年以上にわたって高品質な梅を持続的に生産してきた農業システムは「みなべ・田辺の梅システム」として2015年に世界農業遺産に認定。
地元産の梅を使った個性豊かなクラフト梅酒が味わえる「梅酒の聖地」としても人気。
旅のはじまりは熊野
炭焼き職人の手仕事を拝見
秋津野ガルテンでノスタルジックな
農村体験
明治時代創業の老舗で
梅干しの製造工程を見学
まるでウユニ塩湖のような
幻想的な光景
約200軒の飲食店がひしめく
味光路
熊野三山をめぐる参詣道として奈良時代から平安時代にかけて拓かれた世界遺産・熊野古道。
その中でも紀伊路・中辺路・大辺路という主要3ルートの結節点として栄えたのが田辺です。
JR紀伊田辺駅に降り立った岡本さん、まずは地元生まれの歴史ヒーロー・武蔵坊弁慶の銅像にご挨拶。さっそく、駅から歩いて5分ほどの歴史スポットへ向かいます。
419年創建の鬪雞神社は、源平合戦の頃に弁慶の父が紅白の鶏を戦わせて勝敗を占ったと伝わる場所で、熊野三山の別宮的神社として世界遺産に登録されています。 宮司さんから神社の歴史をたっぷり学んだ岡本さんは「ここをお参りすれば熊野三山を参拝したのと同じご利益があるんですって!ありがたいですね」とにっこり。6棟が並ぶ社殿の美しさと樹齢1200年の御神木・大楠の迫力にも圧倒されていました。
「せっかく田辺に来たら熊野古道を歩かなくちゃ」と、富田川と石船川の合流地点にある滝尻王子へ。ここは熊野九十九王子と呼ばれる神社群の中でも特に重要な神社のひとつで、熊野三山の聖域の入口とも言われています。
隣接する観光案内所・熊野古道館で人生初の平安衣装に着替えた岡本さんは、滝尻王子の境内から熊野古道へ。ところが、想像以上に急峻な石段に悪戦苦闘。「こんな山道を何日も歩き続けるなんて、平安時代の人たちってすごい体力ですよね」と感心しきりでした。
江戸時代、紀州田辺の炭問屋・備中屋長左衛門が売り出した「備長炭」は、強い火力で長く燃える高品質のブランド炭として全国にその名をとどろかせました。
炭の原料は梅林の山の上部に植えられたウバメガシの木で、紀州梅と備長炭は昔から同じ地域で造られていたのだとか。
「道の駅 紀州備長炭記念公園」は、備長炭の歴史や製法、文化を伝える施設です。園内の炭焼き窯では、炭焼き職人が3週間程度かけて焼き上げる昔ながらの製法で、炭づくりの伝統を繋いでいます。
窯場に入っただけで「ものすごい熱を感じる」と顔を火照らせる岡本さん。この日はクライマックスの窯出し作業を体験させてもらうことに。フォークのような歯がついた長い鉄棒を燃えたぎる窯の奥に差し込み、黄金色に焼けた炭を掻き出すのは技術的にも体力的にもハードで「わぁ!難しい!」と思わず悲鳴。炭焼き職人の苦労を肌で感じたようです。
焼き上がった備長炭は鋼鉄のように硬く締まり、叩くとキーンと澄んだ音がします。岡本さんはそんな炭を使った風鈴づくりを体験。出来上がった風鈴を揺らして「軽やかで優しい音がする」と涼やかな自然の音色にうっとりです。
道の駅では、備長炭で焼き上げるBBQのほか、ここでしか味わえないユニークな炭グルメも楽しめます。一番人気の備長炭ラーメンには「麺が真っ黒!」と驚きながらも「つるつるモチモチしててすっごくおいしい」とすっかりお気に入りの様子。さらに、地元の梅を使った梅シロップの牛乳割り「梅ラッシー(梅シロップ1:牛乳4)」も特別に試飲。「絶対売れますよ、コレ」と最後の一滴まで飲み干しちゃいました。
山々に囲まれた自然豊かな秋津野エリアは、古くから梅と柑橘の栽培が盛んな地域。この地には、農村の暮らしを体験できる場所があります。
「秋津野ガルテン」は、昭和28年に建てられた上秋津小学校の廃校舎を活用したグリーンツーリズム施設。宿泊体験や地元農家と連携した農作業体験、農家レストランの手作りスローフードなどが気軽に楽しめます。
2階建て木造校舎に足を踏み入れた瞬間、「この匂い、この雰囲気。子どもの頃に戻ったみたい」と岡本さん。使い古された机が並ぶ教室や子どもたちが書いた掲示物など、小学校だった頃の空間そのままで「机が小さくて可愛い。もう1回小学生時代に戻りたいな」とノスタルジーに浸っていました。
温暖な気候の秋津野エリアでは、みかんやオレンジなど年間を通じて80種類以上の柑橘類が栽培されており、季節ごとの収穫体験が楽しめます。
施設内には地元のみかん作りの歴史を紐解くみかん教室や自家製スイーツが味わえるカフェもあり、旧校庭のテラスで味わう名物みかんゼリーパフェには「何よりも果実が甘い!ゼリーもソフトも素材の味そのまんまで、めっちゃおいしい」と大満足でした。
秋津野ガルテンのもうひとつの主役は、梅。6月になると紀州南高梅の収穫が始まります。そんな梅をジュースに加工したり、梅の枝を煮込んで生地を染める草木染など様々な体験が楽しめるグリーンツーリズムの魅力にどっぷりはまった岡本さん、「今度はぜひ泊まってみたいな」とリピート確定です。
長期保存できて食中毒予防や疲労回復などの効果もある梅干しは、日本の食文化になくてはならない名脇役。日本の梅生産量の約半分を占めるみなべ・田辺地域では、古くから梅干しづくりが盛んです。
「和歌山生まれなのに、子どもの頃は梅干しが苦手だったんですよね」という岡本さんですが、大人になってから苦手を克服し、今ではすっかり梅干し好きになったとか。
そんな岡本さんのお気に入りが、明治30年創業の老舗「中田食品」の梅干し。今回は本社工場で念願の梅干しづくりの裏側を覗かせてもらうことに。「梅回廊」の名がついた見学通路には、紀州梅に関する写真や梅干しの製造工程を説明したパネルのほか、大きな窓の先には一粒ずつ手作業で梅干しを容器に詰める従業員の皆さんの姿が。
岡本さんは「梅干しづくりってほとんど手作業だったんですね」とびっくり顔です。
併設の直売所では、ずらりと並ぶ様々な梅干しの中から3種類を試食し、「ご飯が欲しくなっちゃう」と食欲を刺激された様子。続いて梅酒の試飲コーナーでは「飲み過ぎないようにしなくちゃ」と言いつつグラス片手にニッコリ。
さらに人生初の梅酒づくりにも初挑戦。果汁が滲み出るように冷凍した梅と氷砂糖をビンに入れ、ホワイトリカーをたっぷり注いで密封し、オリジナルラベルを貼り付ければ、あとは3カ月ほど寝かせるだけ。
「意外と簡単に作れるんですね。3カ月後が楽しみ!」と、完成が待ち遠しい様子でした。
田辺湾の北側に突き出た天神崎は、和歌山県を代表するネイチャースポットです。
日和山を中心とする東京ドーム4個分の森と、岩礁で形成されたこの岬は、美しい自然や歴史的建造物を市民が買い取り自分たちの手で守り続けていく「ナショナル・トラスト運動」が日本で初めて行われた場所としても知られています。
「懐かしいな。中学校の校外学習で来た以来だから20年ぶりくらいですね」という岡本さん。磯辺には天然のプールのような潮だまりがいっぱい。この辺りは生き物たちの宝庫で、湾一帯で採れるのはウニだけでも約50種類、海藻は約500種類にものぼるとか。
天神崎は、紀伊半島屈指のフォトスポットとしても有名です。潮の満ち引きや天気などの条件が揃えば、岩礁に溜まった水が鏡のように反射して、南米ボリビアの名所「ウユニ塩湖」にそっくりの幻想的な写真が撮れるとSNSで話題に。近年では国内外から多くの旅行者がカメラ片手にやってきます。
夕日に照らされた海辺を眺めながら大きく深呼吸する岡本さん。波と風の音にそっと耳を澄ませて「五感が生き返る気がする」とポツリ。地元・和歌山の美しさを再認識したようです。
最高の景色を撮影したい方は、田辺観光協会のホームページに潮見表やおすすめカレンダーなども掲載されているので、参考にしてみてはいかがでしょうか?
JR紀伊田辺駅前の狭いエリアに200店以上が軒を連ねる「味光路」は、和歌山県随一の飲食店街。田辺漁港が近いので、どのお店でも新鮮でおいしい魚が味わえるそう。「お店がいっぱいありすぎて目移りしちゃう」という岡本さんが選んだのは、赤ちょうちんが目印の老舗居酒屋「とっくり」です。
田辺市には、全国唯一の「梅酒で乾杯条例」があるということで、岡本さんも1杯目から梅酒をグイッ。女将さんが、生しらすやヒロメ(ひとはめわかめ)など地元・田辺漁港で水揚げされたばかりの肴をチョイスしてくれました。
春シーズンの名物「もちがつお」は、釣った直後に活〆にしてから4~5時間以内に食べる新鮮なカツオのことで、つきたてのお餅のような食感が特長。岡本さんも「もちっとした歯ごたえがスゴイ!臭みもゼロで甘くておいしい」と大絶賛。梅酒との相性も抜群です。
「他の梅酒も飲んでみたい」という岡本さんは、2軒目の「魚と鉄板串焼き 福福」へ。こちらのお店は、独自のレシピで漬け込んだクラフト梅酒をはじめ、地元産の梅酒21種の中から3種類を自由に選べる飲み比べセットが人気。
岡本さんは、ブランデー梅酒や紹興酒を使ったオリジナル梅酒カクテルなど、今まで知らなかった梅酒ワールドを次々と開拓。一口飲むたびに満面の笑顔です。
〆は豆腐から手作りする名物・麻婆豆腐と甘酸っぱい梅酒のマリアージュ。「梅酒ってこんなに奥が深かったんですね…」と大感動の夜でした。