海と大地の恵みのまちで
雄大な自然と多彩な食に出逢う
2024 Nov.
Today’s LOCORECO trip!
別海町は、北海道らしい大平原が広がる牧歌的な風景が見られる一方、東部には日本最大の砂嘴(さし)である野付半島や南部には風蓮湖があるなど、様々な景観を有している。また、生乳生産量日本一の牛乳と豊かな漁場で水揚げされる海産物を食材とした様々な料理を食べられるのも魅力。そんな恵みいっぱいの町を旅したのは、山之内 すずさんです。
(文/兼子雄治・写真/鈴木大喜)
※営業時間や価格は、すべて取材当時のものです。
北海道別海町について
人口:13,991人(2024年10月31日時点)
面積:1,317.17k㎡
豆知識:町名の由来は、町最大の河川である西別川の河口が大きく曲がっていることから、アイヌ語の「川の折れ曲がっている」を意味する「ペッ・カイエ」から転化したもの。
北海道 / 別海町BETSUKAI TOWN
別海町は、北海道の東部に位置し、オホーツク海に面しており、根室市、標津町、中標津町、標茶町、厚岸町、浜中町の6市町と接している。 北海道らしい大平原が広がる牧歌的な風景が見られる一方、ラムサール条約登録湿地に認定された「野付半島・野付湾、風蓮湖」を有し、自然条件に富んでいる。別海町の基幹産業は「酪農」と「漁業」。 日本一の生乳生産量を誇る乳製品をはじめ、大きくて甘い「野付のホタテ」、明治時代からの伝統漁法で漁をする「北海シマエビ」、かつて徳川幕府に献上していた「西別鮭」や「イクラ」など、ブランド価値の高い食材が豊富。
INTRODUCTION
山之内 すずやまのうち すず
Profile
2001年10月3日 兵庫県神戸市生まれ。2019年AbemaTVの恋愛リアリティーショー「白雪とオオカミくんには騙されない♡」の出演をきっかけに芸能界デビュー。 SNS総フォロワー数は110万人を超え、現在ではTVCM、地上波テレビ番組、更に俳優として映像作品にも活動の幅を広げている。
オホーツクの恵み
別海町が誇るグルメとは⁉
北海道の東の端っこ「別海町」にやってきた山之内さん。豊かな自然やグルメに出逢える町として全国にファンも多いこの町。
その魅力のひとつに生乳生産量日本随一の酪農があります。人口の約7倍もの牛たちが暮らす別海町のシンボルにまずは挨拶をして、旅の始まりです。
さて、1人目のロコレコさんに会いにやって来たのは尾岱沼漁港(おだいとうぎょこう)です。尾岱沼漁港は、野付湾に面し、ホタテや北海シマエビ、ホッキなど道内でも有数の漁獲高を誇る港です。
すると「すずちゃん、こんにちは!」と声をかけてくれたのが野付漁業協同組合青年部長の木村 悠希(はるき)さん。颯爽と船の上から登場です。
鮭やホタテの漁師である木村さんによると、別海町は潮流が速くプランクトンが豊富に流れ込む漁場で、様々な魚種が水揚げされるめぐみ豊かな海域。北海道の中でも最高級の海鮮が味わえるんだとか。
「別海町ではたくさんの海産物がとれるんですが、地元ならではの最高の海鮮を食べに行きませんか?」と木村さんに誘われ、「最高です!待ってました!何が食べられるか楽しみです」と漁港を後にします。
木村さんに連れてきてもらったのは「酔楽まる太 別海店」。野付半島前浜で獲れる一級品の魚介を数多く提供しているお店として地元の方にも大人気。迎えてくれたのは魚介の仲買人もつとめる店主の大隅 啓年(ひろとし)さん。
大隅さんみずからが競り落とした地のものを中心にオホーツクの海の幸が豊富にそろうお店とのことで期待に胸が高鳴ります。
「最初に食べてもらいたいのはこちらです!」と大隅さんが持ってきてくれたのは「イクラ丼(要予約)」。
「別海町の鮭は、献上鮭として知られており、その味や大きさから最高級と位置付けられているんです。その鮭からとれたイクラなので最高ですよ!ちなみにイクラは別海町のふるさと納税返礼品としても人気なんですよ!」と木村さん。
「これは本当に美味しそうです!イクラ大好きです。早速いただきます。ぷちぷちとした食感と濃厚な味、最高!はじけます!大きい粒が揃っていて美味しすぎます!」と笑顔の山之内さん。
別海町のイクラは、ご自宅でも堪能できます。
詳しくはふるさと納税サイト「ふるラボ」から。
「続いてなんですが、すずさんは“ホタテ”好きですか?尾岱沼漁港に水揚げされるホタテは、豊富なプランクトンと潮流の速い野付半島周辺で育つため、身のひきしまった大きな貝柱が特徴なんですよ。こちらも最高です」と木村さん。
「もちろん生でも最高なんですが、今回は北海道ならではの食べ方、お刺身を半解凍でいただく“ルイベ”で召し上がってください。一味醤油がおすすめです」と大隅さんにすすめられます。「大きいホタテですね!ルイベって鮭とかでは聞いたことがありますが、ホタテは初めてです。こちらも最高です。口の中で溶けた瞬間に甘味がひろがります!」と山之内さん。
次々に別海町を代表するグルメが目白押しのなか、大隅さんがシメに持ってきてくれたのは「北海シマエビ天丼」です。「北海シマエビですか?初めて聞きました!」と目を丸くする山之内さん。
「北海道を代表する海産物のひとつなんですが、中でも打瀬舟漁によって水揚げされた尾岱沼産の北海シマエビは極上だと言われています。餌でおびき寄せるエビ籠漁ではなく曳網で漁をするので、餌の味やにおいがエビに付くことがなく、エビ本来の味を味わうことができるんですよ」と木村さん。塩ゆでにした際、体側に3本の白い縞が見られることから、紅白の色合いを持つ縁起の良いエビとされ、おせち料理などにも用いられることもあるそうです。
「エビが殻まで丸ごと揚がっていて最高に美味しいです」と驚く山之内さん。
「実は、こちらの天丼で使用しているのは脱皮したばかりの「脱皮エビ」だから、皮がやわらかくて食べやすいので、丸ごと天ぷらにしているんです」と大隅さん。脱皮エビで天丼を食せるのは同店ならではなんだとか。
大満足の内に別海町が誇るグルメを味わい大満足の山之内さんでした。
酔楽まる太 別海店
木村 悠希さん
Profile
野付漁業協同組合青年部部長。鮭やホタテの漁師。
MOVIE
濃厚イクラ丼のお味は!?
体感するレトロ!
“懐かしい”に思いを馳せて
続いてのロコレコさんに会いにやって来たのは、なにやらレトロな車両がある場所です。
こちらの自走客車が走っていた当時は、地域唯一の交通機関(1963年、奥行臼から上風蓮小学校前まで開通した簡易軌道で、翌年には村役場上風蓮出張所まで延長)で冬期間の風雪に耐える近代設備として、生活・生産物資(主に生乳)の輸送に大きく貢献したそうですが、時代の流れや自動車の普及とともに利用度は減少。1971年3月をもって廃止された路線の車両だそうです。
鉄道車両は乗るのも見るのも好きだという山之内さん、興味津々です。
「こんにちは、すずさん。別海町地域おこし協力隊の樋野 茜です。ステキな車両ですよね?」と声をかけてくれたのが、京都府出身の樋野さん。
昔から歴史的建造物が大好きで今年の8月から協力隊の文化財活用担当として活躍しています。「そうすると、やっぱりレコしてくれるのは別海町の文化財という事ですよね?この車両がそうなんですか?」と山之内さん。
「実はこの自走客車だけではなく、この場所が「旧別海村営軌道・風連線奥行臼停留所(きゅうべつかいそんえいきどうふうれんせんおくゆきうすていりゅうじょ)」と言って路線廃止後も旧駅舎や車両、転車台が残されていて、別海町の指定文化財なんです」と樋野さん。
「実はこの近くに“奥行臼駅(おくゆきうすえき)”という昭和初期の建築様式を留める美しい駅舎があるんです。こちらも別海町の指定文化財なんです。今回はその“奥行臼駅”をレコしますね」と樋野さんに誘われ、「奥行臼駅」に移動してきました。
「なんだかレトロで素敵な雰囲気ですね!初めて来たんですけど懐かしい気持ちになります」と山之内さん。
樋野さんによると、奥行臼駅は、1933年12月に開通した国鉄標津(しべつ)線の駅で、別海町の南の玄関口として重要な役割を果たしていたそうです。
しかし、自動車の普及等によって、その役割は次第に小さくなり、国鉄からJRへの移行後、1989年4月標津線廃止とともに幕を閉じた駅だそうです。旧標津線で唯一残る木造駅舎は1933年当初のものだとのことで、そのノスタルジックな雰囲気を楽しみました。
「撤去されていたレールも新たに敷設されていて路線廃止以前に近い形で復元されているんです。その線路を体感してみませんか?」と樋野さんに誘われ「体感?すごく興味があります」と線路の方へ移動します。
「実は足漕ぎトロッコで昔の線路を走ることができるんですよ」と樋野さん。「これは楽しそうですね!行ってみましょう!」と出発です。「開放的!清々しい風を感じて本当に最高です。景色も本当に美しくて心が洗われました!」と笑顔の山之内さんでした。
※施設内部の公開期間は、例年5月1日から11月3日まで。
奥行臼駅(おくゆきうすえき)
根室原野の開拓と産業の振興を図るため敷設され1933年12月1日に開通した国鉄標津線の駅。1989年4月29日の廃止までの56年間、村営軌道の乗換駅等として、周辺地域の物資の輸送のみならず、文化・生活の発展に重要な役割を果たしてきた。昭和初期の建築様式を留める奥行臼駅、関連施設である島式ホーム、詰所、石炭小屋等周辺施設を含め別海町の文化財に指定されている。
樋野 茜さん
Profile
別海町地域おこし協力隊。京都府出身。歴史的建造物が大好き。
MOVIE
木造駅舎でレトロ体験
言葉を失う瞬間
最果ての儚い絶景へ
3人目のロコレコさんに会いにやって来たのは、道の駅おだいとうです。
「あれ?ここにも牛がいますね!やっぱり別海町には、たくさんの牛がいるんですね。ここは景色も良いし気持ちの良い場所ですね」と道の駅での散歩を楽しむ山之内さん。
「こんにちは、すずちゃん。神部です」と声をかけてくれたのは3人目のロコレコさん、神部 久美子さんです。
「実は私もすずちゃんと同じ関西出身なんですよ!大阪府枚方市から約50年前に移住してきました」と神部さん。
「えー!嬉しいです!でもどうして別海町に?」と山之内さん。
「縁あって、別海町で酪農をやっていた旦那と出会って、結婚したんです。本当に良い所で、今では、別海町と枚方市は友好都市になっているんですよ。実はそのきっかけは私なんです」との神部さんの言葉に「すごすぎる!行動力がありますね!尊敬します」と山之内さん。
「それほどに別海町を愛している神部さんがレコしてくれるのは、何ですか?」と山之内さんの質問に「ここから見えている野付半島を紹介しますよ」と応えてくれます。
なんでも野付半島は、全長約26kmもある日本最大級の砂でできた半島(砂嘴・さし)で、海流の浸食も相まって複雑に入り組んだ海岸線が豊かな自然、多様な生命を育んでいるんだとか。
「こちらでは独特の自然や動物たちを観察することができるんですよ。エゾシカの群れがあそこにいます」と神部さんが案内してくれた先には、厳しい自然環境の中で生きるエゾシカをみることができました。
神部さんによると、野付半島はバードウォッチングの名所としても有名で、250種以上の野鳥が確認されているそうです。この時期にはオオワシやオオハクチョウなどの群れを観測することもできるとのこと。
しかし、年間約1.5cmの速さで地盤沈下が進み、このままいけば約100年後には海の下に沈んでしまうと予測されているという話を聞き、その風景をしっかりと目に焼き付けました。
そんな野付半島には「トドワラ」と「ナラワラ」と呼ばれているスポットがあり、消えゆく半島の様子をみられるそうです。
「トドワラ」は、トドマツ林が、海水面上昇ないし地盤沈降に伴う地面の浸食により枯死(こし)したもので、立ち枯れたトドマツの残骸が湿原上に立ち残り、荒涼とした特異な風景を見せているエリア。
「ナラワラ」は、立ち枯れたナラの木の林立地。トドワラに比べ腐朽(ふきゅう)が進んでおらず、枯木が原形をとどめているエリアなんだとか。
野付半島の話を聞きながら案内してもらった山之内さん。厳しくも美しい自然環境を堪能しました。
すると「すずちゃんにもっと見てほしい場所があるから、ここからはガイドさんに連れて行ってもらって」と神部さんに促され、特別な許可を受けたネイチャーガイドさんとのみ体験できるミステリーツアー(予約制)を紹介してもらいました。今回、案内してくれるのは、坂口 つくしさんです。
野付半島内にかつて存在した原生林は、年々半島周辺が地盤沈下し、それに伴い海水が浸入、次々に立ち枯れの森となっていったそうです。
中でも半島の中央に位置する保護林“ポンニクルの森”は、今も海水の浸食が進みかつての“トドワラ”のような景色が広がっており、まるでこの世の終わりのような壮観な景色を見ることができるとのこと。
早速準備して出発です。
野付半島の秘境とも言われるポンニクルの森にたどり着いた山之内さん。
「圧巻です!なにか自然の脅威というか、異世界の入り口の様な感覚でした。最果ての地というか…この立ち枯れの木々が、少しずつ浸食されてなくなっていってしまうんですね…」と貴重な体験をし、その景色をしっかりと見つめたのでした。
道の駅おだいとう
野付半島ネイチャーセンター
日本最大の砂嘴(さし)である野付半島の自然や歴史についての情報を提供している施設。1階では観光案内や特産品の販売などのサービスを、2階では自然や歴史の展示、解説などを行っている。今回、山之内さんが体験したミステリーツアーもこちらの施設で予約可能。
神部 久美子さん
Profile
野付半島ネイチャーガイド。出身の大阪府枚方市と別海町が友好都市となるきっかけを作った。
MOVIE
この世の終わり!?異世界が広がる森
世界一の地元愛
スイーツに込める思い
この旅、最後のロコレコさんは、「奥行臼駅」を案内してくれた樋野さんです。
「すずさん、別海町では酪農が盛んなのは知っていますよね?この牛乳もすごく人気で美味しいんですよ!」と樋野さん。
「すっごいコクがあるけどスッキリ飲みやすいです!最高ですね」と山之内さん。「この美味しい牛乳を使用したスイーツを食べに行きましょう!」と誘われます。
おふたりがやってきたのは、「カフェ・ミルフイユ」です。
「私が日本一別海の牛乳を飲んでいるパティシエの千葉です」と迎えてくれたのは、オーナーパティシエの千葉 隆司さんです。
千葉さんのスイーツは使用する牛乳、チーズや卵など全て別海町産。フランスで修行した千葉さんが別海の牛乳のおいしさを全国に伝えたい。という想いから数々のスイーツを考案しているカフェです。
まず最初にいただいたのは別海の大地の力強さと、その上に降り積もる雪をイメージした「べつかいチーズケーキ」です。特徴の異なる数種類のチーズをブレンドし、濃厚なのにスッキリとした優しいチーズケーキ。
なめらかな“レアチーズ層”とコク深い“ベイクド層”サクサクの“タルト層”の3層構造になっています。「これは本当に美味しくて、また食べたくなります!滑らかで濃厚だけど、どこかスッキリ。初めてのお味です」と山之内さん。
続いていただいたのは地元産のマスカルポーネチーズを使った「なめらかティラミス」。
「すごいなめらかで、深いお味!これも最高!」と感動する山之内さん。
「日本では材料のマスカルポーネチーズが、とても高価なので、どうしてもティラミス本来のチーズのコク感が出るまで配合できないんですよね。でも私はこれが最高だと思うので、チーズの割合が高い超濃厚な味わいにしています」と千葉さんが教えてくれました。
最後にいただいたのは「アップルパイ」です。
「このアップルパイは大好評でなかなか店頭に並ばなかった商品なんですよ」と嬉しそうな樋野さん。
「びっくりするくらいサクサクでジューシーなパイです。リンゴの味と香りも最高です!」と大満足の様子の山之内さん。
「別海町のバターをしっかり使ったサクサクのパイは自慢の商品です」と千葉さんも笑顔です。
「店頭でもなかなか出会えない人気商品も多いので、紹介できて嬉しいです」と嬉しそうな樋野さん。
「別海町の魅力と愛がたくさんこもったスイーツ最高でした!こんなお店が近くにあったらいいのにな!本当に食べられて幸せでした」と満足そうな表情で旅を締めくくった山之内さんでした。
カフェ・ミルフイユ
MOVIE
地元愛にあふれる絶品スイーツ
旅を振り返って…
北海道といえば海鮮というイメージでしたが、中でも別海町ならではの美味しさがあることが分かりました。
北海シマエビや大きなホタテ。イクラも最高でした!
地元のお酒もいただいて、すごく飲みやすくて美味しかったです。
みなさん別海町に愛を持っていらして、何を聞いても笑顔でこたえてくれて。本当に素敵な町なんだなっていうことが伝わってきました。
美味しいお食事、雄大な自然、優しいみなさん。大満足でした。まだまだ体験したいことがいっぱいあります。
ちがった表情が見られる他の季節も見てみたいですし、食べてみたいものもたくさんあります!名残惜しいですが本当にありがとうございました。
撮影・取材協力 別海町