花咲く線路の、その先へ
最東端の街で出会った魅力
2026 Jun.
Today’s LOCORECO trip!
北海道の東に、その列車は走っている。霧と湿原と、太平洋の広大な海原をかすめながら。釧路市、釧路町、厚岸町、浜中町、そして根室市へ約135キロの旅路をつなぐ花咲線。日本最東端の終着駅へ向かう車窓には、どこにもない景色と、ここにしかない出会いが待っていました。初めてのロコレコで根室の魅力を探しに旅をしたのは、丹生 明里さんです。
(文/兼子 雄治・写真/鈴木 大喜)
※営業時間や価格は、すべて取材当時のものです。
北海道根室市について
人口:21,793人
面積:506.25km²
(2026年2月末日現在)
豆知識:観察できる野鳥は年間300種を超えるとも言われ、国内有数のバードウォッチング地としても知られる。市名はアイヌ語「ニムオロ(樹木の繁る場所)」に由来するとされる。
北海道/ 根室市NEMURO CITY
日本本土の最東端の街、太平洋と根室海峡に抱かれた根室半島の先に広がる根室市。日本で最も早く朝日が昇る街として知られ、晴れた日には水平線の向こうに北方領土の島影が浮かぶ。夏でも海霧(じり)が涼やかに流れ込み、断崖と湿原が織りなす落石岬、ラムサール条約に登録された春国岱・風蓮湖。人の暮らしのすぐ隣に、雄大な自然が広がる。 釧路から愛称「花咲線」と呼ばれる列車が、湿原と海岸線をぬって2時間以上かけて街にたどり着く。古くはアイヌの人々が暮らした地であり、江戸期は交易の北の拠点として、明治以降は漁業と開拓の歴史を重ねてきた。花咲ガニ、サンマ、昆布、鮭。四季の海の恵みが食卓を豊かに彩り、ソウルフード「エスカロップ」や豚串なのに「やきとり弁当」など、この地ならではの味も数多い。湾を見下ろす総鎮守の杜では漁師たちが代々の信仰を守り、海とともに歩んできた歴史と文化が、この街を深く豊かなものにしている。
JR北海道・根室本線の釧路〜根室間(約135km)に付けられた愛称「花咲線」。この路線は、釧路を出発し、湿原や太平洋の海岸線をぬうように東へと向かいます。1日に数えるほどの列車だけが行き交うこの路線は、車窓に広がる雄大な風景や、季節の野生動物との出会いに心ひかれる旅人に愛されています。
今回、丹生さんが訪ねるのは、終着駅の根室駅と、太平洋を望む小さな落石駅の周辺。日本で最も東を走る列車に揺られて、それぞれの土地に眠る宝を探しに行きます。
電車に乗りしばらくすると、車窓には北海道の大自然が広がりはじめます。とりわけ別寒辺牛(べかんべうし)湿原を貫く区間は、花咲線屈指の名所。ラムサール条約に登録された広大な湿原を、列車はゆっくりと駆け抜けていきます。
タンチョウ、エゾシカ、希少な野鳥たちが姿を見せ、季節ごとに表情を変える湿原の風景は、まさに自然のドラマそのもの。やがて列車が落石海岸沿いを走る頃には、断崖と太平洋が車窓いっぱいに迫り、霧の日には幻想的な景色が広がります。旅人の心を引きつける、忘れがたい景色を運ぶ路線です。
INTRODUCTION
丹生 明里にぶ あかり
Profile
2001年2月15日生まれ、埼玉県出身。 2017年にけやき坂46(現・日向坂46)の二期生としてデビューし、2025年にグループを卒業。現在は俳優・タレントとしてドラマや舞台、バラエティなど幅広い分野で活動中。TBSラジオ『丹生明里 HAPPY CARAVAN』のパーソナリティを務めるほか、YouTube「にぶちゃんねる」ではゲームコンテンツを中心に発信中。
花咲線に揺られて
落石岬の絶景へ
釧路駅から根室駅へと向かう花咲線に乗り込んだ丹生さん。これから、根室の自然をいちばんよく知るロコレコさんと合流し、絶景が待つというあるスポットへ向かいます。日本で最も東を走る列車に揺られながら、心は新しい景色との出会いに向かって、静かに高鳴っていくのでした。
すると、車内でひとりの男性が、丹生さんに笑顔で声をかけました。この旅、最初のロコレコさんとなる有田 茂生(ありた しげお)さんです。根室市観光協会職員として、街と自然の魅力を発信し続けている人物。出身は大阪府で、21年前に根室の自然に惚れ込んで移住したのだとか。今ではすっかり地元の顔となり、観光の最前線で人々を案内し続けています。土地への深い愛情と、専門家ならではのまなざしを兼ね備えた、頼もしいロコレコさんの登場です。
やがて車窓の先に、太平洋に突き出した小さな半島が。有田さんが「あの先が、これから向かう落石岬です」と指し示します。アカエゾマツの森と断崖に囲まれた、根室半島でも有数の景勝地で、ほかでは出会えない景色が広がっているといいます。「ぜひ、その目で見てほしい」というそのまなざしには、根室の自然を伝えてきた20年の確信が宿っていました。期待を膨らませた丹生さんは、列車が落石駅に着くのを心待ちにします。
ふたりが降り立ったのは、花咲線の落石(おちいし)駅。1919年の開業から100年以上、この土地で旅人を迎え入れてきた歴史ある駅です。ホームに降り立つと、聞こえてくるのは風と海鳥の声だけ。ここから落石岬まで、ふたりの旅がいよいよ動き出します。
駅からすっかり離れ、ふたりを迎え入れたのはアカエゾマツの天然林。樹齢を重ねた大木も点在するという原生の森が、ひんやりとした空気を運んできます。地面には木道が敷かれ、湿地の上を歩きやすく整えられていますが、足元には注意も必要。「黒くなってるところは足元が悪いので」 と、有田さんが優しく声をかけます。森の中はとても静か。ときどき葉ずれの音だけが耳をくすぐる、自然との対話そのものの道のりです。
「この辺りはどんな動物が住んでいるんですか?」という丹生さん。有田さんによると落石岬とその周辺には、エゾシカのほか、オジロワシ・オオワシといった猛禽類や希少な野鳥たちも暮らし、運がよければ様々な生き物に出会えるのだそう。歩くごとに自然のドラマと向き合うような道程が続きます。
「あちらにある小さな赤紫色の花を双眼鏡で見てみてください。日本でここにしか咲かない花があるんです」と有田さん。これが落石岬を世界的に有名にした植物「サカイツツジ」です。落石岬は日本でほぼ唯一の自生地として国の天然記念物にも指定されている、貴重な存在。5月下旬から6月上旬の短い間だけ、淡い赤紫色の花を咲かせます。「すごく可愛くて美しい」と丹生さん。
森を抜けた瞬間、視界が一気に開けました。目の前には、果てしなく広がる太平洋。「海がキレイ!」 と丹生さんが思わず声を上げます。「こんなに美しい青色だと思わなかった」 と、その青さに見入りながら歩を進めます。「ほかでは見られないものがあります」 と語っていた有田さんの言葉が、目の前の景色の中に息づいていました。
「私がいちばん好きなのは、この場所からの景色なんです」と有田さん。「何度通っても飽きることがないのは、自然がそのたびに違う表情を見せてくれるからなんです」と遠くを見つめるそのまなざしには、この土地を選んだ人ならではの、静かな誇りがにじんでいました。風と波の音だけが響くなか、断崖のすぐ下まで波が打ち寄せる迫力に、ふたりは言葉を失います。
しばらく景色を眺めたあと、丹生さんがゆっくりと振り返ります。「想像していた何倍もすごかったです」と、興奮冷めやらぬ様子。「来てよかった。ここでしか出会えない景色に連れてきていただいて。本当に嬉しいです」と、感慨深げに語ります。根室最初のレコは大自然を全身で受け止めた、忘れがたい時間でした。
落石岬 (おちいしみさき)
根室半島の南西に位置する、太平洋に突き出した小さな岬。アカエゾマツの天然林を木道で抜けた先に、断崖と水平線が広がる絶景が現れる。岬一帯にはサカイツツジ、エゾカンゾウ、ハマナス、イソツツジなど、季節を彩るさまざまな花々が咲き、訪れる人の目を楽しませてくれる花の名所。サカイツツジの自生地として国の天然記念物にも指定されており、貴重な自然環境が今も守られ続けている。岬の先端には1890年初点灯の落石岬灯台が立つ。
有田 茂生さん
Profile
大阪府出身。21年前に根室に移住し、現在は根室市観光協会職員として根室の自然・観光の魅力を発信し続けるキーパーソン。
MOVIE
花咲線で行く絶景旅
最東端の駅から
海の街のお社へ
落石岬の余韻を胸に、丹生さんはふたたび花咲線に乗り込みました。落石駅から終点・根室駅までは、東を目指して約20分の旅。窓の外には太平洋と原野が広がり、列車の揺れに身をまかせるうちに、次に出会う人や場所への期待が静かに膨らんでいきます。丹生さんを乗せた花咲線は、ゆっくりと終着の駅を目指していきます。
ガタンと列車が止まり、降り立ったのは「日本最東端の駅」と知られる根室駅です。改札を出ると、駅前にはレトロな看板が並び、潮の香りがふっと鼻をくすぐります。終着駅というよりも、ここから街の暮らしが始まる根室の玄関口。北の海と歴史を背負ったこの駅は、訪れる人を静かに、しかし誇り高く迎え入れてくれます。
駅前で穏やかな笑顔で待っていてくれたのが、2人目のロコレコさん、阿部 慎一郎(あべ しんいちろう)さんです。生まれも育ちも根室、地元の食材を生かした料理を作り続ける料理人。日々の食材を仕入れる港のすぐそばで生きてきたからこそ、根室の自然と海への思いが誰よりも深くからだに染み込んでいる人物です。
そんな阿部さんに連れて来てもらったのは、根室の街を見下ろす高台に鎮座する金刀比羅神社(ことひらじんじゃ)。地元では「こんぴらさん」の愛称で親しまれる、根室の総鎮守です。創建は1806年、海を生きる漁師たちの守り神として崇められてきた、深い歴史を持つお社です。参道沿いに木々が並び、街と海を見渡せる気持ちのよい場所です。阿部さんは毎月1日にここを訪れ、商売繁盛と日々の感謝に手を合わせるのが習慣なのだそうです。
こちら金刀比羅神社の毎年8月、3日間にわたる例大祭では、お神輿が神社を出発して街中を巡り、また神社へと戻ってくる勇壮な神事が行われます。「北海道三大祭のひとつ」とも称されるこの祭りには、全国各地から訪れる人が後を絶たないのだそうです。
すると阿部さんが「ぜひ見てほしい」と案内してくれたのは、社務所脇に納められたひときわ大きなお神輿。重さなんと1.5トン。「これを、50人がかりで担ぐんですよ」 と阿部さん。「それは勇ましいでしょうね!」と丹生さんの目も輝きます。
「参拝をしましょう」と阿部さんにうながされ、本殿の前に立った丹生さん。「旅で出会ったみなさんへの感謝と、これからも笑顔でいろんな人と会えますように。そんなことをお願いしました」と笑顔の丹生さん。
「実はこの神社、ちょっと変わったパワースポットがあるんです」と阿部さん。案内されたのは、正神門脇に掲示された龍の画。長くこの地で漁師たちを見守ってきたこの龍は、いつしか口コミでご利益があると広まり、携帯電話の待ち受け画像にする等され、知る人ぞ知るパワースポットとして親しまれているのだとか。「確かに。見れば見るほど、ありがたみを感じます。歴史を感じられる」とじっと絵に見入る丹生さん。古い時代から守られ続けてきた絵の重みが、静かに伝わってきました。
「もうひとつ、ぜひ見ていただきたいものがあるんです」と阿部さん。するとおもむろに海の方向を指さしました。「あの先の海に浮かぶ小さな島に、金刀比羅神社のもうひとつのお社があるんです」年に1回、神職の方のみが船で海を渡り、その社へお供えを届け、海の安全と豊漁を祈る祭礼が行われるのだそう。北の海とともに生きてきた根室ならではの神事。「街の人たちが、海を見ながらお祈りを続けてきたんですね」と丹生さん。
「海も、お祭りも、毎日の暮らしの一部なんだなって。来て良かったって心から思います」と、丹生さんの言葉にはこの土地への深い敬意がにじんでいました。
金刀比羅神社 (ことひらじんじゃ)
根室の街を見下ろす高台に鎮座する、根室の総鎮守。1806年、北洋漁業の開拓者・高田屋嘉兵衛(たかたや かへえ)が漁場の守護神として創建したのが始まりとされ、御祭神は大物主神(おおものぬしのかみ)をはじめとする三柱。漁業・商業・家内安全の守り神として広く崇敬を集めてきた。境内では、自分の厄を玉に込めて岩に投げて打ち砕く「厄割玉(やくわりだま)」体験のほか、旅の安全を祈る「旅守り」も人気。創建者・高田屋嘉兵衛の像も建立されている。
根室ベース
ロコレコさんの阿部 慎一郎さんが2019年にオープンしたダイニングバー。札幌での寿司修行と父の寿司店での経験を活かし、根室の地場産品を中心に全国各地の旬の食材を組み合わせた、こだわりの料理を提供している。花咲ガニ、根室産の花咲しいたけ、ツブ貝、ホタテを使ったメニューなど、ここでしか味わえない一皿の数々で根室の人々に深く愛されている1軒。
阿部 慎一郎さん
Profile
根室生まれ・根室育ちの料理人。地元の食材を生かした料理を作り続け、毎月1日には金刀比羅神社で商売繁盛と日々の感謝を祈る習慣を続けている。
MOVIE
海を望むパワースポット
これがコンビニ⁉
やきとり弁当を、車窓とともに
3人目のロコレコさんに会いに、丹生さんがやって来たのは、市街地から少し東に離れた住宅街「千島町(ちしまちょう)」。静かな家並みのなか、ふと甘い香りが鼻をくすぐります。「えぇー、いい香り!」 と思わず立ち止まる丹生さん。香りの先にあるのは、地元の銘店「端谷菓子店」です。ガラス越しに店内をのぞくと、店主らしき男性がにっこりと手招きをしてくれました。
迎えてくれたのは、この旅3人目のロコレコさん、端谷 陽介(はしや ようすけ)さんです。端谷菓子店の3代目として、祖父の代から続くお店を守り続けています。看板商品は、長く親しまれてきた「オランダせんべい」。素朴ながら唯一無二のやわらかい食感で、世代を超えて根室の人々に愛されてきた逸品です。「いつもテレビで見てます!嬉しいです」と温かく出迎えてくれた端谷さん。そんな端谷さんが「レコしたいものがある」と丹生さんを案内してくれることに。
「端谷菓子店」を離れ、歩いていると「地元の人だったら当たり前なんですけど、知らない方からしたら、びっくりするようなコンビニがあるんです。ぜひ紹介させてください」 と端谷さん。連れて来てもらったのは、看板に「タイエー千島本店」と書かれた店舗。「もしかしてこれですか?」 と丹生さん。「はい、こちらがタイエーです」と端谷さん。「一見すごく普通なコンビニですよね、見た目は…」と店内へ案内してくれました。
中に入ると、出迎えてくれたのはコンビニの規模を超えるような賑やかな店内。商品棚には新鮮な海鮮や根室の地元食材が並び、店先には買い物カートまで備えられています。「商品を入れるカートがあります!普通コンビニでは見ないですよね?」と丹生さんが驚きの声。タイエーは根室市内に4店舗を展開する地元密着のコンビニで根室っ子に重宝される存在なのです。
店内を見渡していると、丹生さんが大きな声を上げました。「カニがいる!」タンクの中には、ちょうど入荷したばかりの花咲ガニ。「コンビニにカニがあることが衝撃的です!」と丹生さん。「ちょうど旬が始まった時期なんです。タラバガニと比べて小さいんですけど、味がその分濃縮されていて、ギュッとつまっているんです」 と端谷さん。さらに、地元では「カニの早食い競争」があるカニ祭りも開催されると聞いて「参加したい!」と思わず身を乗り出す丹生さん。
カニの興奮も冷めやらぬまま店の奥へ進むと、香ばしい香りが漂ってきました。「これは何ですか?」という丹生さんに「ここが焼き場です」と端谷さん。なんと店内に焼き台が設置され、やきとり弁当がその場で焼き上げられているのです。「コンビニなのに焼き台があるんですね!初めてみました!」 と丹生さん。「“やきとり弁当”なんですけど、こちら根室では“串に刺さった豚肉”なんですよね」と端谷さん。「えっ?」と目をまるくしながらも、地元で愛される根室のソウルフードを知るうちに「これを買って、花咲線で食べたいです!」と丹生さんの目が輝きます。
タイエーで焼きたてのやきとり弁当を手に入れた丹生さん。端谷さんと挨拶をかわし「景色を見ながら、ゆっくり食べたい」と、向かったのは根室駅。ふたたび列車に乗り込みます。太平洋や原野を窓越しに眺めながら、贅沢な食事タイムへ。「地元の列車で、地元の景色をみながら、地元のお弁当を食べる!なんてご褒美なんだろう」と、丹生さんの足取りも軽やかです。
列車が走り出すと、丹生さんはさっそく包みを開けました。湯気とともに広がる、香ばしい醤油ダレの香り。お米の上に並んだ新鮮な海苔とやきとり。一口ほお張ると、「タレがたっぷりかかって、海苔とも相性が良くておいしい!」と思わず声が漏れます。「毎日でも飽きない」と地元で語り継がれる根室のソウルフード。窓の外を流れる夕暮れの景色と、温かなお弁当。花咲線で過ごすこの時間は、旅のいちばんの贅沢になりました。
タイエー 千島本店 (たいえー ちしまほんてん)
端谷菓子店
1950年創業、根室・千島町の住宅街に佇む老舗菓子店。看板商品の「オランダせんべい」は、長崎県のオランダ坂の石畳から名と模様を取ったと伝えられる根室銘菓。もともと固い食感だったが、かつて映画館で観客が食べるときに音が鳴らないよう柔らかく改良されたという逸話を持つ。黒砂糖をベースにした上品な甘さと、添加物を一切使わない手づくりの味は、地元で世代を超えて愛され続けている。
端谷 陽介さん
Profile
端谷菓子店の3代目。祖父が1950年に開業した老舗を、専務取締役として支えながら、添加物を一切使わない手づくりのオランダせんべいを毎日焼き続けている。根室を代表する菓子職人のひとり。
MOVIE
地元で愛されるお弁当
春国岱で見る
とっておきの夕焼け
旅もいよいよ終盤。夕暮れが訪れる頃、丹生さんがやって来たのは、根室市街地から西へ車で約20分、温根沼(おんねとう)を跨ぐ大きな橋「温根沼大橋」付近。こちらで出会ったのは4人目のロコレコさん、奈良 匠(なら たくみ)さんです。「根室在住のダンサーをしています。普段は子どもたちにダンスを教えているんです」と笑顔で挨拶してくれました。日本本土最東端の街の大自然をこよなく愛する奈良さんが、旅の締めくくりにとっておきの絶景を案内してくれます。
「日本最東端と聞いて多くの方が思い浮かべるのは納沙布(のさっぷ)岬( 写真左 )希少な自然環境を持つ場所( 写真右 )だと思います」と奈良さん。「本当に絶景なんですが、今日はそれと同じくらい素晴らしい場所を案内したいです」連れて行ってくれるのは、温根沼大橋を渡った先に広がる「春国岱(しゅんくにたい)」。太平洋と風蓮湖に挟まれた約8kmの細長い砂州(さす)で、海・湖・湿原・アカエゾマツ林が一体となった希少な自然環境を持つ場所(写真下)。ラムサール条約にも登録された、根室の大自然そのものです。
橋を渡って春国岱へ足を踏み入れると、まるで別世界。「ここは大自然に入り込めるような場所なんです」と奈良さん。「運がよければ、野鳥をはじめ、たくさんの野生動物に出会えますよ。道中で、キツネを見かけたこともあります」 。春国岱は、エゾシカや希少な水鳥、タンチョウ・オオワシ・オジロワシなど多くの野生動物が季節を変えながら集う場所です。
歩を進める間に、空が少しずつオレンジ色に染まりはじめました。「すごく綺麗ですね……」と丹生さんが思わずつぶやきます。時間がゆっくり溶けていくようなパノラマに「こんな空、なかなか見られないですよね」と丹生さん。すると奈良さんが「さらに美しい景色をお見せしますからね」と微笑みます。
森を抜けた先に開けた視界。目の前には、湖と海と空が一体となった、息をのむような風景が広がっていました。日本本土の最東端の街で迎える夕日。その光が水面に降り注ぎ、湿原一帯を紅く染め上げていきます。「本当に素晴らしい夕日ですよね」と奈良さん。砂州の上にアカエゾマツが育つこの景色は、世界でも2例しかないという、学術的にも極めて貴重な自然環境 。言葉を失うような美しさを、ふたりはじっと見つめていました。
ゆっくりと水平線へ落ちていく夕日を眺めながら、丹生さんがじっと景色に見入ります。「こんな夕日、初めて見ました」と丹生さん。日本でいちばん東の街で見る、心ほどける夕暮れ。その美しさを胸に、根室の旅は夕日とともに静かに幕を下ろしました。
春国岱 (しゅんくにたい)
奈良 匠さん
Profile
根室在住のダンサー。ダンススタジオを経営。日本本土の最東端の街・根室の大自然をこよなく愛している。
MOVIE
感動!奇跡の夕日
Special Interview丹生 明里
私、とっても、癒やされました
タイエーさん、びっくりしました。一見、普通のコンビニみたいな見た目なのに、中に入ったらまさかの花咲ガニが水槽にいたり、店内に焼き台があったり。「これってコンビニ?」って驚きっぱなしで。地元の人にとっては当たり前なのかもしれませんが、知らない人間からすると、本当に新鮮で素敵な気づきでした。豚肉のやきとり弁当もおいしくて。忘れられない味になりました!
金刀比羅神社は、阿部さんに案内していただいたんですけど、素晴らしい場所でした。1.5トンのお神輿を50人で担ぐお祭りの話、その大きさを目の前で見て圧倒されました。龍の画のパワースポットや、海の向こうの社の話など、興味深いことがたくさんありました。本当に素晴らしいご縁でした。
落石岬の海の青さも、春国岱の大自然も忘れられないです。落石岬では木道を抜けた先に視界が開け「うわ、海!」って思わず声が出ちゃって。まさかこんなに青色だと思わなかった。春国岱は景色も湿原も夕日も、すごく綺麗でしたね。砂州の上にアカエゾマツが育つのは世界で2例しかないと聞いて、自然の貴重さを実感しました。
花咲線、実は来るまでは知らなかったんですけど、乗れて本当に良かったです。湿原や太平洋を眺めながら過ごした車内での時間は、忘れられない思い出になりました。根室のみなさんの温かさと、豊かな自然と食文化に出会えて、私、とっても、癒やされました 。ありがとうございました!
MOVIE
旅を終えて
撮影・取材協力 北海道根室市
画像提供 北海道根室市・根室市観光協会