Today’s LOCORECO trip!

愛媛県のほぼ中央に広がる東温市。松山市の隣に位置し、松山市駅から東温市の横河原駅までは伊予鉄道の電車で約30分、車なら東温市役所まで約25分という、アクセス良好な地域です。市域のおよそ4分の3を山林が占め、山あいには滝や渓谷がいくつも隠れています。

龍が横たわる渓谷の奥の滝、賞味期限3分の生みたらし、囲炉裏で味わうどぶろくとそば、そしてお隣・西条市の名水と老舗の味——矢吹奈子さんの、山と水に癒やされる愛媛県の旅がスタートします。

(文/兼子 雄治・写真/はるき としひろ)
※営業時間や価格は、すべて取材当時のものです。

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愛媛県東温市・西条市について

東温市
人口:32,373人
面積:211.3km²

西条市
人口:101,397人
面積:510.01km²
(2026年9月末日現在)

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愛媛県/ 東温市・西条市

TOON CITY・SAIJO CITY

東温市は2004年、重信町と川内町が合併して誕生した。南に皿ヶ嶺連峰を望む道後平野の東部では、愛媛県が全国有数の生産量を誇る「はだか麦」が育ち、県民の家庭の味「麦みそ」を支えている。2006年には地域の歴史や偉人をミュージカルで描く常設劇場「坊っちゃん劇場」が開場し、文化の発信地にもなっている。

山あいには白猪の滝や白糸の滝が点在する。明治時代に正岡子規と夏目漱石が訪れ句を残した白猪の滝は、2026年に国の名勝への指定が答申された。秋は紅葉に彩られ、厳冬期には滝全体が凍りつく氷瀑となって、四国では珍しい冬景色を見せる。

お隣の西条市は、同じ2004年に西条市・東予市・丹原町・小松町が合併して生まれた、燧灘(ひうちなだ)に面したまちだ。四国八十八ヵ所の第60番から第64番まで、5つの札所が市内に集まり、10月の「西条まつり」では150台を超えるだんじりやみこしが奉納される。山の東温市と、海に開けた西条市。車で約30分の2つのまちをめぐれば、愛媛県の山と水の恵みを1日で味わえる。

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INTRODUCTION

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矢吹 奈子やぶき なこ

Profile

2001年6月18日生まれ。東京都出身。
HKT48・IZ*ONEのメンバーとして世界でも活躍する。
グループ卒業後は連続ドラマのヒロインを務めるなど、現在は俳優業を中心に活動の幅を広げている。

01.

龍が眠る渓谷で
異世界の奥の滝へ

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旅の始まりは、東温市の山の上に広がる塩ヶ森(しおがもり)ふるさと公園。展望台に立つと、眼下には田んぼと、山々に囲まれたまちの風景が広がります。「山々に囲まれて、本当に空気がすっごく気持ちいいです。秋風を感じてます!」と、矢吹さん。思わず深呼吸したくなる眺めです。

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公園のふもとの南方(みなみがた)地区には、かつて讃岐(さぬき)へと続いた旧讃岐街道が通り、その道沿いには大地主の屋敷「坂本家住宅」が今も残っています。江戸末期の主屋や、寺院の山門のような座敷門などが、2026年に国の登録有形文化財への登録を答申されました。山の上から見渡す里には、こうした暮らしの歴史も息づいています。

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「ずっとこの空気を吸ってたいくらい、癒やされますね」とつぶやく矢吹さんに、「ここももちろんですが、他にもいい場所があるんですよ」と声をかけてくれたのは、この旅最初のロコレコさん、佐伯 敦(さいき あつし)さん。1200年以上の歴史を持つ惣河内神社(そうこうちじんじゃ)の宮司さんで、東温市で生まれ育って67年。境内に巨大な「しめ縄龍」をつくるなど、地域おこしにも取り組んでいます。「実は東温市って、滝がたくさんあるんですよ。今日は、非日常を味わえるような滝スポットにお連れします」

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佐伯さんの案内でやって来たのは、山あいの滑川渓谷(なめがわけいこく)。足もとに広がるのは、ツルツルとした一枚岩の川床です。「この表面がツルツルしてて、ずーっと1キロほど続いているんですよ」と佐伯さん。“なめらかな床”という意味で「ナメラ」と呼ばれるこの川床は、もとは田畑だった場所が水害で流され、固い岩盤が顔を出したものだといいます。「こんなの初めて見ました!」と、矢吹さんは興味津々。手を浸せば「すごく冷たい!なんか急に小学生に戻った感じです」と笑顔がはじけます。

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川床のあちこちには、ぽっかりと丸い穴が。流れの渦で小石がぐるぐると回り、岩を少しずつ削ってできた「甌穴(おうけつ)」です。「洗濯機のように、ぐるぐる石が回るんですよ」という佐伯さんの説明に、「ドラム式洗濯機みたいな感じですね!」と楽しそうな矢吹さん。ハートの形をした甌穴を見つけ「このハートを見たら縁が結ばれるみたいな話、良さそうですね!」と、2人で新しい名所の名前を考えるひと幕も。

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渓谷を奥へと進むほど、木々が頭上を覆い、空気がひんやりと変わっていきます。大きな岩をくぐり抜けた先に現れたのは、両側をU字形の岩壁に囲まれた空間と、その奥に落ちる「奥の滝」。龍が横たわっているような地形から「龍の腹」と呼ばれる場所です。「神秘的!ここだけすごく雰囲気がガラッと変わって、異世界に来た感じです」と、矢吹さんは圧倒された様子。

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「滝っていうのは“さんずい”に“りゅう”と書くよね。だからこういうところには龍神様がいらっしゃるんですよ」と佐伯さん。ここで写真を撮ると、龍神様が写ることもあるのだとか。「龍神様、写ってくれますように!」とシャッターを切る矢吹さん。「自然に囲われてる感じが、守られてるみたい。マイナスイオンがすごいです!」と胸いっぱいに深呼吸。「滝を見ると癒やされました。浄化される感じ」と、東温市の大自然に心まで洗われた時間でした。

滑川渓谷

なめがわけいこく

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白猪の滝などとともに東温市の名勝旧跡に数えられる渓谷。松山自動車道の川内ICから車でおよそ30分、山あいの明河地区にある。駐車場から遊歩道をたどると、前の滝、中の滝、そして最奥の奥の滝へと、大小の滝が次々に姿を現す。なめらかな岩肌には木の葉の化石が見つかることもあり、太古の時間に思いをはせながら歩くのも楽しい。4月下旬からは新緑と苔、夏は涼やかな避暑地、11月中旬からは紅葉、冬には滝がつららに変わり、季節ごとに表情を変える。入場は無料。足もとは濡れて滑りやすいので、歩きやすい靴で訪れるとよい。

INFORMATION

住所|愛媛県東温市明河
電話番号|089-964-4414(東温市地域活力創出課)

坂本家住宅

さかもとけじゅうたく

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旧讃岐街道沿いに残る、かつての大地主の屋敷。敷地内でもっとも古い江戸末期の主屋は、土間に太い松丸太を組んだ力強い造りで、明治中期には正面に入母屋造2階建ての角屋が増築された。1階が書院風、2階が数寄屋風の「新部屋」は、欄間など細部の意匠まで華やか。1896年(明治29年)ごろに建てられた「離れ」には、2階に16畳の大広間が設けられている。寺院の山門を思わせる本瓦葺きの座敷門とあわせた4件が、2026年に国の登録有形文化財への登録を答申された。2024年11月には地元の人たちが「坂本家住宅を守る会」を立ち上げ、修繕と再生に取り組んでいる。見学は事前に問い合わせを。

INFORMATION

住所|愛媛県東温市南方535-1

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佐伯 敦さん

Profile

東温市生まれ、67歳。白猪の滝のある河之内地区で生まれ育つ。1200年以上の歴史を持つ惣河内神社の宮司を務める。龍神伝説が残るまちで巨大な「しめ縄龍」をつくるなど、地域おこしにも力を注ぐ。

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滑川渓谷

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02.

持ち上げたら、とろ〜ん
賞味期限3分の生みたらし

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2人目のロコレコさんに出会うためにやって来たのは、柳原泉(やなぎはらいずみ)。江戸時代につくられた湧水の泉で、かつては農業用水として地域の暮らしを支えてきました。「本当、水がとっても綺麗なまちですね」と矢吹さんが見とれていると、「矢吹さーん!」と明るい声が。「愛媛の情報を発信して12年。愛媛のことならお任せの、ゆりママんと申します」愛媛県のカフェやグルメ、おでかけ情報を発信するブロガーで、ブログは月間40万人以上が閲覧する人気ぶりです。「今日はとっておきの、極上トロトロのお団子をご紹介したいと思います。しかも賞味期限が3分と短いんですよ!」とゆりママんさん。

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「急がなきゃ!」と向かったのは、「炭焼き団子 志津かわ珈琲庵(すみやきだんご しつかわこーひーあん)」。もともとそば店だった建物を、レトロな雰囲気を生かして改装した和カフェです。「合掌造りみたいな屋根が珍しいですよね」とゆりママんさん。店内には囲炉裏を囲む大きなテーブルと畳の座敷が広がり、「和の雰囲気が最高です」と矢吹さんもうっとり。

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迎えてくれたのは、代表の和田 勝也(わだ かつや)さん。「早速ですが召し上がってください。“生だんごのみたらし”です」。ふつうは焼いて仕上げるお団子を、焼かずにそのままみたらしに絡めた一品です。串をそっと持ち上げると、お団子が重みでとろ〜んとたわみます。「確かにこれは、持った感じがもう重みがすごいです。串から落ちる限界ですね!」と、矢吹さんは大慌て。

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賞味期限が迫るなか、ひと粒をぱくり。口いっぱいに頬張った矢吹さんは、しばらく言葉が出てきません。「幸せ……美味しすぎます!最初はみたらしの甘じょっぱい感じが来るんですけど、その後はずっとお餅の甘さが続いて、ずっと幸せでした」材料は米粉。食感は限りなくお餅にちかい。「もちもちなんですけど、ふっくらふわふわみたいな感じ」と矢吹さん。その秘密は、小さな気泡をたっぷり含ませた生地にあるそうです。

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実はこのお団子、偶然から生まれたもの。ふわふわもちもちの焼き団子をめざして試作を重ねたものの、柔らかすぎて網から垂れてしまい、何度やっても焼けなかったのだとか。「もったいないなと思って、焼かずにちょっと食べてみたら、これ美味いやん!ってなって」と和田さん。そこから約2カ月、串から落ちる限界ギリギリまで、水分を調整してきました。時間がたつと空気が抜けて食感が締まってくるため、このふわふわを味わえるのは3分ほど。「ここでしか食べられないお団子を作りたいっていう熱い気持ちが伝わってきました」と、矢吹さん。足を運ぶ価値のある、とっておきの一串でした。

炭焼き団子 志津かわ珈琲庵

すみやきだんご しつかわこーひーあん

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ラーメン店を営む地元の会社が、2024年5月、そば店の跡地に開いた和カフェ。80席を備えるゆったりとした店内は、ひとりでも家族連れでも過ごしやすい。団子は群馬県から取り寄せた米粉を使い、店で一から手づくりしている。生だんごのほかに人気なのが、七輪で自分で焼きながら味わう「5種の炭火焼きお団子セット」。焼きたての香ばしさと、とろける生だんご。ひとつの店で2つの楽しみ方ができる。朝9時から開いており、モーニングのほかに、羽釜で炊いたご飯を使ったランチもいただくことができる。時間を変えて何度でも通いたくなる1軒だ。

INFORMATION

住所|愛媛県東温市志津川1738-1
電話番号|089-961-1595

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ゆりママんさん

Profile

愛媛県のカフェやグルメ、おでかけスポットを取材・発信するブロガー。発信を始めて12年、ブログは月間40万人以上が閲覧する。ゆりママんブログ

MOVIE

みたらし団子

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03.

山奥のパン屋さんから
囲炉裏の隠れ家レストランへ

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「人里離れて、また山奥にやってきました。緑がいっぱい!」。3人目のロコレコさんに出会うため山道を進んでいると、どこからか香ばしい匂いが漂ってきます。「なんかいい香りがします。なんだろう?」と香りのもとを探す矢吹さん。

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「矢吹さーん!」と迎えてくれたのは、この旅3人目のロコレコさんの松村 有希(まつむら ゆき)さん。フランスで暮らしていた頃、夫のアクセル・バザンさんと日本を旅して立ち寄ったのが愛媛県でした。空き家を紹介してもらったのをきっかけに、4年前に東温市へ移り住み、2022年に2人でパン工房「アクセルパン」を開きました。工房の奥では、アクセルさんが薪の炎でパンを焼く準備の真っ最中。「電気オーブンじゃなくて、薪の炎でパンを焼く、とても古代的なパンの焼き方をしています」と松村さん。矢吹さんも長い棒を借りて、窯の火加減を整える作業に挑戦!「重たい……せーの!」炎の熱を間近に感じながら、「熱い!アニメで見るような感じですね」と目を輝かせます。

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焼きたてをいただくのは、「サワードウ」と呼ばれるパン。イーストを使わず、小麦粉と水だけで起こした生地の力で膨らませる製法で、その歴史は古代エジプトにさかのぼるともいわれます。「パンのご先祖さんなんです」と松村さん。材料は小麦粉と塩と水の3つだけ。アクセルさんはフランス・ブルターニュ地方で修業したパン職人。小麦粉は愛媛県産を使っています。この日のパンは、水の代わりに甘酒を加えた「甘酒パン」。手に取った矢吹さんが「確かに持った感じが……」と言うと、「重いですよね」と松村さん。割ってみると、ずっしりとした重みが手に伝わります。「すごいもちもち!甘さもあるんですけど、すごく自然で、ジャムにもバターにも合いそうな優しい味です」アクセルさんに向けて「セボン!」と伝えると、うれしそうな笑顔が返ってきました。

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「今日は何をレコしてくれるんですか?」と矢吹さん。「完全予約制の、里山に隠れた私の大好きなレストランです」そう言って松村さんが案内してくれたのは、工房から歩いてほんの少し。「赤そばどころ」の看板を掲げる農家レストラン「ぼたん茶屋」です。アクセルさんがパンを焼く工房を貸してくれたのが、この店を営む永井 公一(ながい きみかず)さん。「永井さんがいなかったら、アクセルもこの場所でパンを焼けていないんです」と松村さんが話してくれました。

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「わー、素敵!お家みたい」。民家のような店内には囲炉裏が切られ、鮎や鶏がじっくりと焼かれていました。料理を手がけるのは、永井さんの奥さま・里美(さとみ)さん。畑で採れた野菜を中心に、ほとんどの食材がこの近所でまかなわれています。そばの実を揚げたチップスに、つるむらさきと柿の和えもの、掘りたての落花生「おおまさり」の塩ゆで……。「枝豆みたいな食感のピーナッツ、初めて食べました!」と笑顔の矢吹さん。

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遠火で皮目をパリッと焼き上げた鮎にかぶりつくと、「わっ、みずみずしい!焼いてあるのに、身がふっくらふんわりしてます」と矢吹さん。そこへ「お料理に合うお酒があるので、ぜひ飲んでいただきたいです」と永井さんが持ってきてくれたのは、自家製のどぶろく「ながい」。原料は、永井さんが自ら育てた井内(いうち)の棚田米と麹だけ。東温市は「どぶろく特区」に認定されていて、自分で米を育てる農家が、その米でどぶろくを造ることができるのです。

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「どぶろく、私初めてかもしれないです。お米のつぶつぶ感もしっかりあって、本当に美味しい」と矢吹さん。糖類は一切加えず、甘みは発酵から生まれる自然なもの。全国どぶろく研究大会では入賞を重ねてきた、こだわりの一杯です。実は先ほどの甘酒パンに使われている甘酒も、永井さんの手づくり。「永井さんとアクセルのコラボが甘酒パンなんです」とにっこり微笑む松村さん。

矢吹さんもいただいた、ぼたん茶屋のどぶろく「ながい」は、東温市のふるさと納税の返礼品にも選ばれています。

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締めは、この店の主役である手打ちそば。上には、ピンク色の小さな花が添えられています。「これが赤そばですね。ちょうど時期的に今、咲いてるんですよ」と永井さん。ネパールの標高4,000mほどの高地に咲いていた赤い花のそばを、信州大学で品種改良した「高嶺ルビー」で、畑で育てて自家製粉しています。そば粉だけで打つ十割そばは、その日の予約に合わせて朝に打つのだとか。「すごく甘いです!噛めば噛むほど甘みがきますね。つゆなしでも美味しい」と矢吹さん。岩塩を削ってぱらりとかければ、そばの甘みがいっそう引き立ちます。

「素敵な空間で食べるから、よりほっとして。おなかも心もいっぱいになりました」と満足そうな矢吹さん。どぶろく「ながい」で松村さんと、もう一度乾杯して、食事を楽しみました。山里の恵みと人の温かさを、囲炉裏ばたでじっくり味わった時間でした。

農家レストラン ぼたん茶屋

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1996年創業。どぶろく工房を併設する、井内地区の農家レストラン。料理を担う永井 里美さんが、自家栽培の米や野菜、地域のお母さんたちが育てた旬の野菜を使って献立を組み立てるため、メニューは季節ごとに変わる。そばランチのほか、和食ランチや蕎麦会席、どぶろくを使ったぼたん鍋のコースもあり、いずれも予約制で4名から。どぶろく「ながい」は甘口・中辛・辛口の3種類で、そばやはだか麦で仕込んだ変わり種も手がける。近くには築150年を超える茅葺き屋根の古民家「井内の里 人空田」があり、一棟貸しの宿泊も。山里の時間に、心ゆくまで身をゆだねたい。

INFORMATION

住所|愛媛県東温市井内1142
電話番号|089-966-3981

アクセルパン

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フランス出身のパン職人、アクセル・バザンさんと、妻の有希さんが営むパン工房。旅の途中で東温市に縁ができて移り住み、2022年に創業した。工房は、井内の棚田のそば、ぼたん茶屋の敷地にある。天然の発酵種で生地を育てるサワードウにこだわり、添加物を使わず、地元の素材を取り入れながら一つひとつ焼き上げる。購入は、週2〜3回の市場への出店のほか、全国に発送するオンラインショップでも。ずっしりとした1斤には、パン職人の暮らしと東温市の恵みが詰まっている。

INFORMATION

住所|愛媛県東温市井内

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松村 有希さん

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フランス在住時に夫のアクセル・バザンさんと日本を旅し、立ち寄った愛媛県で空き家を紹介されたのを機に東温市へ移住。東温市の好きなところは「人のやさしさと大自然と、水がおいしいところ」

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ぼたん茶屋

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04.

お隣、西条市で
鉄板ナポリタンと洋風焼き鯛めし

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旅の最後は、東温市のお隣の西条市(さいじょうし)へ。東温市役所から車で約30分、石鎚山(いしづちさん)のふもとに広がる“水の都”です。案内してくれるのは、ふたたびゆりママんさん。西日本最高峰の石鎚山に降った雨は地下にしみ込み、まちの下を流れています。地中に管を打ち込むだけで水が噴き出すことから、その湧き水は「うちぬき」と呼ばれ、市内に約2,000か所もあるのだとか。やって来たのは、西条市役所のすぐ近くにある「うちぬき広場」です。「遠方から、この水を求めてくる方も多いんです」とゆりママんさん。さっそく手ですくってひと口。「おー、冷たい!美味しい!スーって入ってきます」と矢吹さん。やわらかな軟水で、コーヒーを淹れると格別なのだとか。「さっきコンビニのコーヒー飲んじゃいました……飲み直したい!」と、矢吹さんは悔しそうに笑います。

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ゆりママんさんが西条市で紹介したいお店があると連れてきてくれたのが、伊予小松駅の目の前に立つ「マルブン小松本店」です。1923年(大正12年)創業、100年以上にわたって地元で愛されてきた老舗レストランです。「かわいらしい!」と、レトロな外観に矢吹さんの声が弾みます。

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店内で迎えてくれたのは、店長の柳川 龍二(やながわ りゅうじ)さん。「イタリアンとかお好きです?」とゆりママんさんに聞かれ、「好きです!本当に嫌いなものがなくて」と矢吹さん。席に着くと、ゆりママんさんが「せっかく西条市に来ていただいたので、西条の名物グルメ、あの熱々のやつをお願いできたら」と注文します。「かしこまりました」と柳川さん。「“熱々のやつ”ってなんだろう……?」と不思議そうな矢吹さん。

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ジュウジュウと音を立てて運ばれてきたのは、「西条てっぱんナポリタン」。こんもり盛られたパスタの上には自家製のフランクフルト、下には卵焼きが敷かれていて「ビジュアルが最高すぎて!」と矢吹さん。卵と絡めてくるくると巻き取り、熱々をひと口。「美味しい!ナポリタンって懐かしい味だったはずなのに、すごくオシャレで新しい!」鉄板で提供されるのには、ちゃんと理由があるそうで。「愛媛県西条市の人って、温厚な方が多くて、食べるのもゆっくりな方が多いそうで、鉄板なら最後まで熱々の状態で美味しく食べられるからみたいですよ」とゆりママんさん。鉄板で提供すること、卵を下に敷くこと。この2つが西条てっぱんナポリタンの“決まり”で、卵のおかげでパスタが焦げつかず、まろやかさも増すのだそう。「これから下に卵、流行るんじゃない?」と、矢吹さんはすっかりこの一皿のとりこになったのでした。

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「次のおすすめメニューなんですが、愛媛といえば?」とゆりママんさん。「みかん、鯛めし!」と矢吹さんがこたえます。続いて登場したのは、西条市を含む東予地域で生まれた新しいご当地グルメ“洋風焼き鯛めし”の元祖、「焦がしバター醤油 五代目鯛めし」。鯛めしといえばお刺身や炊き込みがありますが、こちらは鯛の表面を香ばしく焼き、ご飯の上にのせた一品です。スプーンでほぐしてご飯と混ぜ、ぱくり。「革命です。このパリパリに焼けた部分が、またいいアクセントになって」と矢吹さん。たっぷりのバターを焦がし、醤油と合わせた焦がしバター醤油のソースに、「焦がしバター醤油、本当に大好きです!」と大喜び。

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使われているのは、愛媛県のブランド鯛「鯛一郎(たいちろう)クン」。臭みがなく、水分たっぷりでふっくらしているのが特徴です。「火を通してもすごく柔らかくて、鯛の旨味が口に広がるのが本当に幸せすぎます」。もとは、先代のまかないから生まれたメニューなのだとか。グルメの大会でグランプリに輝き、いまでは東予地域のご当地グルメとして広がりつつあります。ずっと愛されてきた鉄板の味と、新しく生まれた鯛めし。「昔ながらのものと新しいものを、新旧で味わえて楽しいですね!」と矢吹さん。西条市の“おいしい”を堪能したのでした。

マルブン小松本店

まるぶんこまつほんてん

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はじまりは1923年(大正12年)5月、当時は無人駅だった伊予小松駅の前に開いた小さな食堂。現在は株式会社マルブンがレストラン8店舗を展開し、小松本店は住宅地にたたずむ本格イタリアンとして親しまれている。熱々の鉄板に卵焼きを敷き、その上にナポリタンを盛りつければ、ジュウッという音とともに香ばしい湯気が立ちのぼる。「西条てっぱんナポリタン」は市内の多くの店で味わえるご当地グルメで、甘辛くこってりとした店もあれば、マルブンのようにトマトの酸味を生かしたさっぱり系もある。お店ごとの違いを食べ比べるのも、西条市ならではの楽しみだ。

INFORMATION

住所|愛媛県西条市小松町新屋敷甲407-1
電話番号|0898-72-2004

うちぬき広場

うちぬきひろば

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西条市役所の近くにある広場で、「うちぬき」が1985年(昭和60年)に環境省の名水百選に選ばれたことを記念して整備された。記念の石碑の横では、地下から湧き出る水を自由に飲むことができる。市内では先端を加工した鋼管を15〜30mほど打ち込むだけで水が噴き出し、その自噴域はおよそ8.1km²にも広がる。まちを歩けば、あちこちで水の音が聞こえてくるはず。西条市の“水の都”らしさに触れる、まち歩きの出発点にぴったりだ。

INFORMATION

住所|愛媛県西条市神拝(西条市役所となり)

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西条市ナポリタン

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SPECIAL旅を振り返って

Special Interview矢吹 奈子

大自然も、たくさんのグルメも
癒やしの時間に心洗われました!

Special Interview
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今回も大自然もだし、すごくたくさん美味しいグルメも味わえて、幸せでした。最初に行ったのが滑川渓谷。久しぶりに滝を見て、滝を見ると癒やされるんだって思いましたね。あそこまでの道のりも全部、東京に住んでいるとなかなか見ない大自然だったんですけど、一番奥の滝に行った時は本当に空気感が全く違いました。本当に異世界に来たみたいな感覚になって、心洗われました

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志津かわ珈琲庵さんの“生だんごのみたらし”は、本当にもちもちで。生団子は初めて食べたんですけど、焼いてないお団子、本当に私のタイプのお団子でした。もともとみたらし団子がすごく好きだったんですけど、1位になっちゃいました!賞味期限が3分というので、そこでしか食べられないっていうのもいいですよね。

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ぼたん茶屋さんは雰囲気も素敵で、炉端焼きの鮎も食べられたのがすごく嬉しかったです。お蕎麦は十割の蕎麦粉で作られていて、店主のこだわり抜いたお蕎麦。舌触りがザラザラした感じで、すごく甘くて美味しかったです。ずっと居たくなる空間でしたね。

西条市のマルブン小松本店さんの鉄板ナポリタンは、イタリアン風の爽やかなトマトの味。下に卵焼きがあるのは、これから色々なところで流行りそうだなと思いました。洋風焼き鯛めしは、生のお刺身がのった鯛めしが大好きだったんですけど、革命が起きましたね!焼いたらこんなにもっと鯛の旨味が出てくるんだっていう新発見で、また食べたくなっちゃいそうです。

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東温市と西条市の大自然も、美味しいものも、本当にいろんな方に広めたいです。また絶対に来たいです!ありがとうございました!

撮影・取材協力 愛媛県