発祥の地で味わう
本場の栗きんとん
続いてやって来たのは、青々とした栗畑。イガがたわわに実る木の間から現れたのは、市川製茶(いちかわせいちゃ)6代目の市川 尚樹(いちかわ なおき)さんです。「中津川市は、岐阜県でも有数の栗の産地なんですよ。ここだけで、栗の木が1,000本ほどあります」と市川さん。お茶づくりのかたわら栗を育て、さらに江戸時代から続く地歌舞伎(じかぶき)の担い手でもあるという、多彩な横顔の持ち主です。「栗の畑を見るのは初めてです。ひとつひとつがポコポコ大きくて可愛い、私、栗が大好きなんです」と大友さん。
すると市川さんが差し出してくれたのは、まだイガが緑色の栗。「緑のうちは未熟だと思ってました」と驚く大友さんに「中身はもう、茶色く熟しているんですよ。太陽をたっぷり浴びせて育てるから、大きくて甘くなるんです」と市川さん。蒸したての一粒をいただきます。「ホクホクだと思ってたけど、それよりしっとり。栗本来の旨みが美味しいです。ふわーっと、全身を栗が巡っていく感じ」と、熱がこもります。
蒸したての栗を味わったあと、「せっかく栗の産地に来たなら、中津川市ならではの栗の名物も食べてほしい」と市川さん。連れてきてくれたのは、宿場の面影が残る中津川宿(なかつがわじゅく)です。中山道の43番目が馬籠なら、ここは45番目の宿場。格子戸の町家や商家が軒を連ねる通りには、街道を直角に曲げた枡形(ますがた・宿場を守るためのかぎの手の道)も残ります。そんな雰囲気を楽しみながら市川さんおすすめのお店へと進みます。
「やっぱり中津川市が発祥と言われている栗きんとんを味わっていただきたい」と市川さんに案内されたのは、創業1864年(元治元年)の老舗「川上屋(かわかみや)本店」。右から読む看板が、160年を超える歴史を物語ります。中山道の枡形にほど近いこの場所で、川上屋は代々、栗の菓子をつくり続けてきました。
店内で迎えてくれたのは、川上屋の中瀬 好恵(なかせ よしえ)さん。ショーケースをのぞいた大友さん、「あれ、私が知ってる栗きんとんじゃないです」と目を丸くします。おせちでおなじみの、黄色くて甘い栗きんとん(金団)とは別物。中津川市のそれは、蒸した栗を砂糖だけで炊き、栗の形を模して仕上げた和菓子です。
「ちょうど今の時期から、今年の栗きんとん作りが始まるんです」と市川さん。実はこの日は、今秋はじめての栗きんとんが川上屋に並ぶ日。「1年でいちばん、みんなが待っている日なんですよ」と中瀬さんが説明してくれます。栗きんとんは、機械ではなく職人がひとつずつ、布巾で茶巾(ちゃきん・上部をきゅっとひねって形を整える技法 )に絞って仕上げます。秋のはじまりを告げる、手仕事の季節です。
できたての一粒をいただきます。しっとりなめらかな舌ざわりのなかに、栗のつぶつぶした食感がほろりと残ります。「栗の風味そのままです!こんなに美味しいなんて感動です。みんなに食べてほしい!」と大友さん。栗と砂糖だけとは思えない濃厚さに「今度、誰かにお土産を渡すときはこれにします!」と大絶賛でした。
川上屋のの栗きんとんは、毎年秋から年末頃までの期間限定。ふるさと納税の返礼品としても人気だと聞いて「いいこと聞いた。ちょうど今年どうしようか悩む時期ですもんね」と嬉しそうな大友さん。栗と砂糖だけが出会って生まれる、この土地にしかない一粒を堪能したのでした。
ふるさと納税返礼品としても人気が高い栗きんとんは、ご家庭でも味わうことができます。
詳細は「ふるラボ」より。
川上屋 本店
かわかみや ほんてん
栗きんとん発祥の地とされる中津川市には、まちなかのあちこちに約20店舗の伝統の味を守る老舗や名店があり、店ごとに少しずつ異なる味わいが楽しめる。川上屋 本店は、1864年(元治元年)創業の老舗のひとつ。看板商品の栗きんとんは、蒸した栗と砂糖だけを、職人がひとつずつ茶巾で絞る手仕事の逸品だ。旬の栗の季節にだけつくられ、その始まりを心待ちにする常連も多い。夏にはかき氷「栗みぞれ」も味わえる。
茶亭市川
ちゃていいちかわ
市川製茶が営む、大正時代に養蚕部屋として建てられた古民家。市川家の自宅を兼ね、いまはお茶の販売と”学びの場”として使われている。日本茶インストラクターでもある店主が開くお茶講座のほか、茶葉の手もみ体験、栗きんとん講座、金継ぎ教室などが土間で催され、学びと愉しみの空間になっている。中山道沿いという立地から多くの旅人も立ち寄り、お茶や栗、干し柿、和菓子、地歌舞伎といった中津川市の文化にふれていく。店先には季節のお茶や菓子なども並ぶ、旅の途中にふらりと立ち寄りたい。
市川 尚樹さん
Profile
中山道・中津川宿で代々続く市川製茶を営む生産者。お茶に栗、干し柿と、季節の恵みを手がけている。
MOVIE
栗きんとん発祥の地へ
木のカフェの
ご褒美モンブラン