これがコンビニ!?
やきとり弁当を、車窓とともに
3人目のロコレコさんに会いに、丹生さんがやって来たのは、市街地から少し東に離れた住宅街「千島町(ちしまちょう)」。静かな家並みのなか、ふと甘い香りが鼻をくすぐります。「えぇー、いい香り!」 と思わず立ち止まる丹生さん。香りの先にあるのは、地元の銘店「端谷菓子店」です。ガラス越しに店内をのぞくと、店主らしき男性がにっこりと手招きをしてくれました。
迎えてくれたのは、この旅3人目のロコレコさん、端谷 陽介(はしや ようすけ)さんです。端谷菓子店の3代目として、祖父の代から続くお店を守り続けています。看板商品は、長く親しまれてきた「オランダせんべい」。素朴ながら唯一無二のやわらかい食感で、世代を超えて根室の人々に愛されてきた逸品です。「いつもテレビで見てます!嬉しいです」と温かく出迎えてくれた端谷さん。そんな端谷さんが「レコしたいものがある」と丹生さんを案内してくれることに。
「端谷菓子店」を離れ、歩いていると「地元の人だったら当たり前なんですけど、知らない方からしたら、びっくりするようなコンビニがあるんです。ぜひ紹介させてください」 と端谷さん。連れて来てもらったのは、看板に「タイエー千島本店」と書かれた店舗。「もしかしてこれですか?」 と丹生さん。「はい、こちらがタイエーです」と端谷さん。「一見すごく普通なコンビニですよね、見た目は…」と店内へ案内してくれました。
中に入ると、出迎えてくれたのはコンビニの規模を超えるような賑やかな店内。商品棚には新鮮な海鮮や根室の地元食材が並び、店先には買い物カートまで備えられています。「商品を入れるカートがあります!普通コンビニでは見ないですよね?」と丹生さんが驚きの声。タイエーは根室市内に4店舗を展開する地元密着のコンビニで根室っ子に重宝される存在なのです。
店内を見渡していると、丹生さんが大きな声を上げました。「カニがいる!」タンクの中には、ちょうど入荷したばかりの花咲ガニ。「コンビニにカニがあることが衝撃的です!」と丹生さん。「ちょうど旬が始まった時期なんです。タラバガニと比べて小さいんですけど、味がその分濃縮されていて、ギュッとつまっているんです」 と端谷さん。さらに、地元では「カニの早食い競争」があるカニ祭りも開催されると聞いて「参加したい!」と思わず身を乗り出す丹生さん。
カニの興奮も冷めやらぬまま店の奥へ進むと、香ばしい香りが漂ってきました。「これは何ですか?」という丹生さんに「ここが焼き場です」と端谷さん。なんと店内に焼き台が設置され、やきとり弁当がその場で焼き上げられているのです。「コンビニなのに焼き台があるんですね!初めてみました!」 と丹生さん。「“やきとり弁当”なんですけど、こちら根室では“串に刺さった豚肉”なんですよね」と端谷さん。「えっ?」と目をまるくしながらも、地元で愛される根室のソウルフードを知るうちに「これを買って、花咲線で食べたいです!」と丹生さんの目が輝きます。
タイエーで焼きたてのやきとり弁当を手に入れた丹生さん。端谷さんと挨拶をかわし「景色を見ながら、ゆっくり食べたい」と、向かったのは根室駅。ふたたび列車に乗り込みます。太平洋や原野を窓越しに眺めながら、贅沢な食事タイムへ。「地元の列車で、地元の景色をみながら、地元のお弁当を食べる!なんてご褒美なんだろう」と、丹生さんの足取りも軽やかです。
列車が走り出すと、丹生さんはさっそく包みを開けました。湯気とともに広がる、香ばしい醤油ダレの香り。お米の上に並んだ新鮮な海苔とやきとり。一口ほお張ると、「タレがたっぷりかかって、海苔とも相性が良くておいしい!」と思わず声が漏れます。「毎日でも飽きない」と地元で語り継がれる根室のソウルフード。窓の外を流れる夕暮れの景色と、温かなお弁当。花咲線で過ごすこの時間は、旅のいちばんの贅沢になりました。
タイエー 千島本店(たいえー ちしまほんてん)
端谷菓子店
1950年創業、根室・千島町の住宅街に佇む老舗菓子店。看板商品の「オランダせんべい」は、長崎県のオランダ坂の石畳から名と模様を取ったと伝えられる根室銘菓。もともと固い食感だったが、かつて映画館で観客が食べるときに音が鳴らないよう柔らかく改良されたという逸話を持つ。黒砂糖をベースにした上品な甘さと、添加物を一切使わない手づくりの味は、地元で世代を超えて愛され続けている。
端谷 陽介さん
Profile
端谷菓子店の3代目。祖父が1950年に開業した老舗を、専務取締役として支えながら、添加物を一切使わない手づくりのオランダせんべいを毎日焼き続けている。根室を代表する菓子職人のひとり。
MOVIE
地元で愛されるお弁当
春国岱で見る
とっておきの夕焼け