春国岱で見る
とっておきの夕焼け
旅もいよいよ終盤。夕暮れが訪れる頃、丹生さんがやって来たのは、根室市街地から西へ車で約20分、温根沼(おんねとう)を跨ぐ大きな橋「温根沼大橋」付近。こちらで出会ったのは4人目のロコレコさん、奈良 匠(なら たくみ)さんです。「根室在住のダンサーをしています。普段は子どもたちにダンスを教えているんです」と笑顔で挨拶してくれました。日本本土最東端の街の大自然をこよなく愛する奈良さんが、旅の締めくくりにとっておきの絶景を案内してくれます。
「日本最東端と聞いて多くの方が思い浮かべるのは納沙布(のさっぷ)岬( 写真左 )希少な自然環境を持つ場所( 写真右 )だと思います」と奈良さん。「本当に絶景なんですが、今日はそれと同じくらい素晴らしい場所を案内したいです」連れて行ってくれるのは、温根沼大橋を渡った先に広がる「春国岱(しゅんくにたい)」。太平洋と風蓮湖に挟まれた約8kmの細長い砂州(さす)で、海・湖・湿原・アカエゾマツ林が一体となった希少な自然環境を持つ場所(写真下)。ラムサール条約にも登録された、根室の大自然そのものです。
橋を渡って春国岱へ足を踏み入れると、まるで別世界。「ここは大自然に入り込めるような場所なんです」と奈良さん。「運がよければ、野鳥をはじめ、たくさんの野生動物に出会えますよ。道中で、キツネを見かけたこともあります」 。春国岱は、エゾシカや希少な水鳥、タンチョウ・オオワシ・オジロワシなど多くの野生動物が季節を変えながら集う場所です。
歩を進める間に、空が少しずつオレンジ色に染まりはじめました。「すごく綺麗ですね……」と丹生さんが思わずつぶやきます。時間がゆっくり溶けていくようなパノラマに「こんな空、なかなか見られないですよね」と丹生さん。すると奈良さんが「さらに美しい景色をお見せしますからね」と微笑みます。
森を抜けた先に開けた視界。目の前には、湖と海と空が一体となった、息をのむような風景が広がっていました。日本本土の最東端の街で迎える夕日。その光が水面に降り注ぎ、湿原一帯を紅く染め上げていきます。「本当に素晴らしい夕日ですよね」と奈良さん。砂州の上にアカエゾマツが育つこの景色は、世界でも2例しかないという、学術的にも極めて貴重な自然環境 。言葉を失うような美しさを、ふたりはじっと見つめていました。
ゆっくりと水平線へ落ちていく夕日を眺めながら、丹生さんがじっと景色に見入ります。「こんな夕日、初めて見ました」と丹生さん。日本でいちばん東の街で見る、心ほどける夕暮れ。その美しさを胸に、根室の旅は夕日とともに静かに幕を下ろしました。
春国岱(しゅんくにたい)
奈良 匠さん
Profile
根室在住のダンサー。ダンススタジオを経営。日本本土の最東端の街・根室の大自然をこよなく愛している。
MOVIE
感動!奇跡の夕日
旅を振り返って…