【ロコレコ】豊かな自然と海の幸 五感で体感!アジな旅!
2025.08.16
静岡県には仕事でもプライベートでも何度も訪れている俳優・歌手のつるの剛士さん。近いうちに夫婦ふたり旅をしたいと考えていて、その第1候補が静岡なのだとか。夫婦旅の本番に備えて、徳川家康が人生で3度、合わせて25年暮らしたゆかりの場所や、忘れられない味覚や、自分の目で見たい憧れの絶景など、静岡市内と大井川上流部に位置する川根本町をめぐりました。(文・野崎さおり/写真・槇野翔太)
つるの剛士
俳優・歌手。1975年福岡県北九州市出身。「ウルトラマンダイナ」のアスカ隊員役を熱演したあと、2008年に結成した“羞恥心”のリーダーとして活躍し、幅広い年代の人気者に。ソロ歌手としても音楽活動を積極的に行なっている。音楽、バイク、釣り、将棋など幅広い趣味を楽しみ、幼稚園教諭や保育士の資格も持つ。
旅のスタートは、徳川家康が壮年期と晩年を過ごした駿府城の跡地「駿府城公園」。静岡市の中心地にあります。
家康が駿府城の築城を始めたのは、1585年。武田氏の滅亡により、駿府周辺の5つの国を支配する大名になったときです。1603年に征夷大将軍になるも、わずか2年で2代秀忠に将軍職を譲って大御所となり、1607年から3つの堀に囲まれた駿府城で暮らし始めます。同じ年に城は火事で消失しますが、直ちに再建。1616年、駿府城で亡くなりました。
東御門は、駿府城二ノ丸の東に位置する主要な出入り口。1996年に日本古来の伝統工法にのっとって復元されました。「東御門から駿府城に入るのは初めて。立派だね」とつるのさん。
門をくぐると3方が囲まれていて、上の方に狭間(さま)と呼ばれる矢や鉄砲で敵を討ち取るための小窓があります。「敵を城内に入れてなるものかということですね」と当時の緊張感に思いを馳せていました。
1616年、75歳で駿府城で亡くなった家康は亡骸を久能山に埋葬するようにと遺言を残していました。久能山は古来は久能寺という寺があり、戦国時代には山城がありました。その場所につくられたのが家康を祭神とする「久能山東照宮」です。「日光と上野の東照宮は行ったことがあるから、来てみたかったんですよ」とつるのさん。
「久能山東照宮」への表参道は1159段の石段です。昔の人は「いちいちごくろうさん」としゃれを言いながら上っていたのだとか。今はロープウェイもありますが、「石段で上った人にだけご褒美があるはずだ!」とつるのさんは足取りも軽くスタートしました。
汗を拭きながら、ジグザグした階段を1159段。一の門そばにある展望スポットに着きました。眼下には駿河湾、東の方向には伊豆半島まで見渡せます。
「潮風がここまで昇ってきている」とつるのさんは清々しい表情。まさに階段を上ったご褒美です。
境内では宮司の姫岡恭彦さんが迎えてくれました。姫岡さんから国宝に指定されている御社殿が、わずか1年7カ月で造営されたこと、権現造と呼ばれる本殿と拝殿を石の間で連結させた様式が久能山から各地の東照宮に広まったことなどを聞いて、つるのさんは感心しきり。
本殿からさらに進んだ奥に、家康の墓、神廟があります。つるのさんは「ただのお墓じゃないパワーを感じる」と特別な雰囲気を感じた様子。この墓は、家康の死から約24年後に3代家光が木造から石造りにつくり替えたものです。家康の亡骸は、遺言に従って1年後に日光に移されたという説もあり、日光東照宮にも墓所があります。
当時、分骨をしたとは考えにくく、家康の亡骸はどこにあるのか、真相は今もはっきりしません。「見晴らしがよくて、風も気持ちがいい。家康がこの場所で眠りたいと言ったのがわかるような気がします」とつるのさんは家康は今も久能山に眠っているという説に傾いているようです。
静岡県はわさびの生産が盛んです。静岡市葵区有東木にある「わさびの門前」という屋号のわさび農家に訪問しました。つるのさんが再訪を希望していた場所です。
「わさびの門前」の14代目としてわさびを育てているのは白鳥義彦さん。有東木は1年中13℃前後に保たれる湧き水が豊富でわさび栽培に適していて、たくさんのわさびを育てています。
つるのさんも収穫を体験。清らかな水が流れるわさび田に入ると、青々とした葉の下に大きく成長したわさびが隠れていました。
つるのさんが再訪を希望した理由は、白鳥さんが振る舞ってくれたわさび丼の味が忘れられなかったから。「わさびを取り寄せて同じようにつくったのに、ただ辛いだけだったんです」と話し、今度こそおいしいわさび丼を自宅でと、わさびをおろす白鳥さんの手元をじっと見つめます。
ご飯の上に鰹節、そして小指の先ほどおろしたてのわさびをのせ、好みで醤油をかければわさび丼の出来上がり。ひとくち食べたつるのさんは「シュワっとさわやかなおいしさだ!」と満足げな表情を見せましたが、みるみるうちに顔が真っ赤になってしまいました。わさびを一気に口に入れすぎたようです。
自宅で作ったわさび丼との違いを「きっと水だ!」とつるのさん。お米もこの土地の清らかな水で炊いたからではないか、と推理していました。「水のおいしさがポイントなら、自宅で再現するのは無理ですね」と、納得したようです。
つるのさんは、家族で営むような民宿に興味を持っていて、ミシュランならぬ「ミンシュクランガイドブックを作りたい」そう。今回は山間の川根本町にある農家民宿「あしたばの宿」に宿泊することになりました。
宿のオーナー、横澤くみ子さんは、生まれも育ちも川根本町。80代になった今も畑で野菜やお茶を育てる傍ら、「あしたばの宿」として宿泊者を迎え入れています。建物に入ったつるのさんは「実家に帰ってきたみたい」と目尻を下げています。
「あしたばの宿」では、宿泊者が横澤さんを手伝うことになっています。つるのさんは、おやつのぼた餅作りを手伝いました。横澤さんお手製のあんこをラップの上に拡げて、半殺しといわれる潰した状態の餅米を包みます。「上手くできたね。いつもつくっているの?」と仕上がりを褒められていました。
自分で作ったおはぎを早速食べると「おいしい。ばあちゃんやかあちゃんが作ってくれた懐かしい味だ」と、つるのさんの目から涙が……。お店では買えない素朴な味に子どもの頃を思い出したようです。
「あしたばの宿」は食事も魅力。横澤さんが育てたさつまいも、なす、お茶の葉などの天ぷら、地元の手作りこんにゃくを使った田楽、国産牛のすき焼き、立派なヤマメの塩焼き、デザートなど食卓いっぱいに並びます。「ゆっくり食べれば、胃がもたれるものはないからね」と横澤さんはやさしく話しかけます。
つるのさんはチャーミングな横澤さんとの会話をたっぷり楽しみながら、「落ち着く」「癒される」と何度も口にしていました。
大井川の上流に位置する川根本町は、静岡屈指のブランド茶、川根茶の産地です。コロナ禍で日本茶好きになったつるのさん。「今年春に飲んだ川根茶が、本当においしかった」と、「つちや農園」を訪れました。
「つちや農園」があるのは、樹木に囲まれた一本道を車で15分ほど上ったところにある集落です。標高が600メートルもあるので、天空の川根茶とも呼ばれます。斜面を覆うような茶畑では、やぶきた、おくひかりのほか、樹齢100年ほどの在来種も栽培されています。
昼夜の寒暖差が大きいと、お茶の葉は、旨みや香りの素になる養分を蓄えやすくなります。標高の高い場所にある「つちや農園」のお茶は、特に香りが高く、数々の品評会で高評価を得てきました。
つるのさんを迎えてくれたのは「つちや農園」の土屋裕子さん。日本茶インストラクターとして日本茶の普及活動も行っています。
土屋さんは、茶畑を見下ろす「天空のティーテラス」につるのさんを案内してくれました。斜面に突き出すように作られていて、天気のいい日は遠くの山並みまで見える雄大でロマンチックな場所です。美しい眺めを見て「シチュエーションが最高! 癒される」とつるのさんも目を細めます。
土屋さんが全国品評会で1等に入賞した貴重な茶葉、やぶきたを使って、「すすり茶」という淹れ方でお茶を用意してくれました。ワイングラスに茶葉を入れ、少量の水を加えて10分ほど待ってからいただきます。
じっくり淹れたお茶をひとくち。「濃厚で、まろやかで、最後に出汁のような旨味があります」。もう一杯、はるみどりでもお茶を入れてもらって、味の差に感じ入っていました。素晴らしい景色をもながら、ここでしか飲めないお茶と体験を存分に味わっていました。
「大井川鐵道」は南アルプスを源流に駿河湾へと注ぐ大井川に沿うように走る鉄道です。千頭駅から大井川鐵道井川線、通称南アルプスあぷとラインに乗り込みました。つるのさんが「この目で見てみたい」と思っていた絶景を目指します。
井川線は、大井川水系のダム建設に使う貨物のために作られました。現在は大井川上流部の美しい景色の中をゆっくり走る観光列車として運行されています。山あいを縫うように走り、トンネルも小さいため車両は小ぶり。つるのさんが乗り込んだ車両は井川線では古いもので昭和28年ごろの製造で、壁やアーチ状の天井も木製です。「ボルトが剥き出しだね」とつるのさんも、どこか懐かしそうに車内を眺めます。
汽笛が鳴って出発。車輪がきしむ音を立てながら、平均時速20キロでゆっくり進みます。「デパートの屋上にある電車みたいだ」とレトロな列車と車窓の景色につるのさんも楽しそう。
大井川と寸又川、横川の3つの川が合流する寸又峡、川面に映る泉大橋など、いくつもの見どころを通って、アプトいちしろ駅へ。
アプトいちしろ駅では、90パーミル(1000メートルの間に90メートルを上る)という日本一の急勾配を上るため、アプト式機関車を連結して進みます。乗客のほとんどが客車を降りて、連結の様子を見ようと大賑わいです。機関車を連結した列車は、力強く勾配を進んでいきます。
次の長島ダム駅でアプト式機関車を分離し、さらにあと2駅進んだ奥大井湖上駅が目的の駅です。「トンネルを抜けるたびに景色が変わって、絵本みたい。もう感動!」とつるのさんは列車を降りても興奮冷めやらぬ様子でした。
奥大井湖上駅へは出発地の千頭駅から1時間ほどで到着。ダム湖の半島のような場所にあって、まるで湖の上に浮いているかのような駅として有名な場所です。
つるのさんが何度も写真で見て憧れた景色は、この奥大井湖上駅を高い場所から見たもの。その景色が見られる展望所までは、駅から歩いて20分ほどです。
まずはダム湖にかかる奥大井レインボーブリッジを渡って、急な階段や山道を上ります。「やっぱり絶景にたどり着くには、苦労するものだね」と改めて話しながら、旅のクライマックスに向けて一歩ずつ歩みを進めました。
ようやく展望所に辿り着きました。見下ろせば、山々に囲まれた青緑の湖に赤い鉄橋がかかっています。疲れも吹き飛ぶような絶景に「これはすごい。映像や写真で何度も見たけれど、やっぱり生で見ると迫力が違う」と話すつるのさん。実は高い場所が苦手で、特に鉄橋はずいぶん怖かったようです。
しばらく景色を眺めていると、列車がやってきました。列車が通るのは上下線合わせて1日に10回程度。出発の瞬間は、短い汽笛が静かな山の景色に響き渡ります。つるのさんもカメラを向けていましたが「汽笛がいいね」とつぶやいていました。
旅の終わりに憧れの絶景を目にしたつるのさん。「静岡って本当にいいところですね。歴史、お茶に食べ物、そして人も、いろんな宝物に出会えて、ますます静岡が好きになりました。ぜひ本物を見てください。妻にも見せたいです」と旅を締めくくりました。
静岡県の歴史観光スポットの魅力発信特設サイト「いざ、しずおかへ!れきしず」はこちらから
撮影・取材協力:静岡県
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