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“世界No.1” の持続可能な観光地大洲 歴史の手触り・未来の鼓動が響く街

まちものがたりは、日本各地で観光やまちおこしに携わるキーパーソンが、ひと味違う旅を求める人に向けて、まちの魅力を紹介します。今回は「持続可能な観光地」として“世界No.1”に輝いた大洲市の魅力を、生まれ育った愛媛県を拠点にラジオパーソナリティやイベント司会、番組ディレクターなど幅広く活動するやのひろみさんが独自の視点で紹介。“愛媛の伝道師”と言うべきやのひろみさんが、改めて実感する大洲の財産(レガシー)とは?
目次
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- 愛媛県大洲市
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- 愛媛を拠点に活動するラジオパーソナリティやのひろみさん
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- 1『おおず赤煉瓦館』~おおず歴史華回廊案内人とめぐる大洲の歴史遺産
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- 2『大洲城』~日本初!日本100名城の木造天守に泊まるキャッスルステイ
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- 3『臥龍山荘』~日本の伝統建築の粋を集めた重要文化財の名建築
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- 4『村田文福老舗』~大洲藩主が愛した400年変わらぬ「月窓餅」
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- 5『冨永松栄堂』~伝統を守りながら革新に挑む大洲名物「志ぐれ」の老舗
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- 6『臥龍醸造 GARYU BREWING』~解体を免れた製糸場の繭倉庫で醸す唯一無二のクラフトビール
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愛媛県大洲市


愛媛県西部に位置する大洲市は、かつては伊予大洲藩の城下町として栄えた街。清流・肱川が市の中心部を流れており、山間部の河辺・肱川地域から瀬戸内海・長浜地域へとつながっています。 昔ながらの街並みなどの歴史的建造物を活用した観光まちづくりに力を入れており、2023年に、オランダの国際認証団体による持続可能な観光についての審査で文化・伝統保全部門の世界1位を獲得。2024年には「世界の持続可能な観光地アワード」で四国初のシルバーアワードを受賞するなど、世界的に注目を集めるサステナブルな街です。
愛媛を拠点に活動するラジオパーソナリティやのひろみさん

愛媛県松山市出身のやのひろみさんは、地元のラジオ、テレビ、イベントなど多彩な分野で活躍する、愛媛では知らない人はいないほどの有名人です。週の半分以上は愛媛県内のあちこちを取材で駆け巡るという生活を長年続けていながら、今もまったく飽きることはないのだとか。
「愛媛にずっと住んでるから何でも知ってるだろうと思われていますけど、毎回必ず知らないことにぶち当たるんですよ。新しいことを知ったり再発見したりすることで、愛媛がもっと好きになっていくんです」
愛媛の魅力を学び続けるやのひろみさんも、大洲市は特別な街だと言います。
「山があって、海があって、美味しいものがあって、人が優しくて、水がきれいで。大洲城があるので、城下町ならではの風情みたいなのもあって。大洲にはいろんなものがコンパクトに全部揃っている気がしますね。愛媛はいいところがたくさんあるんですけど、特に大洲っていうところは、それらがすべて兼ね備わっているんですよ」(やのひろみさん)
1『おおず赤煉瓦館』~おおず歴史華回廊案内人とめぐる大洲の歴史遺産


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
明治・大正期の銀行の本店が、こんなハイカラな和洋折衷な建物だなんて!肱川、木蝋、製糸業、さまざまな流通の拠点がここにあった、という証が、こうして今に残っているのは、偶然じゃなくて大洲の人たちが大切に守ってきた民度の高さがあればこそ。
肱川のほとりに広がるレトロな街並みの中でも、ひと際目を引く建物が『おおず赤煉瓦館』です。明治34年に大洲商業銀行の本店として建てられたこの建物は、当時としては珍しい西洋式の煉瓦建築に瓦葺きの屋根をもつ和洋折衷のデザインが特徴。現在は、地元の工芸品や特産品などが並ぶショップのほか、ギャラリーや休憩スペースとしても活用されています。

「この辺りが昔の大洲の中心地で、とっても賑わっていたんですよ」と案内してくれたのは、おおず歴史華回廊の案内人として活動する今峰優見子さんです。
おおず歴史華回廊は、城下町らしい華やかさが残る大洲の古い町並みを巡る町歩きツアーです。今峰さんは大洲市認定の案内人で、現在活動している約10人の中でも一期生のベテランです。
「案内人はみんな大洲愛に溢れている人ばかりですよ」という今峰さんは、もちろん大洲生まれ大洲育ちだとか。

今峰さんと一緒に『おおず赤煉瓦館』を巡ると、煉瓦の積み方にイギリス式とフランス式が混在していることなどの情報を、軽快で楽しい語り口で案内してくれます。


「当時は隣に製糸用の繭市場があり、その先に船着き場がありました。ここで商売をする養蚕業者や木蝋業者のために銀行が生まれたんですよ」という説明を聞いているうちに、大洲の町と建物が辿ってきた足跡が浮かび上がってくるようです。

本館のショップでは、大洲市内を中心に愛媛県内の工芸品など約200アイテムがずらりと並びます。
「私たちも、ここで大切な人へのプレゼントを探すんですよ」という今峰さんの一押しは、大洲藩の特産品として長い歴史をもちながら、現代的なデザインを取り入れた砥部焼の食器。


¥4,950(税込)
さらに「大洲と言えば繭ですね」と、大洲特産のシルクと愛媛県産のヒノキを使ったハンドクリームを薦めてくれました。

シルクハンドクリーム(ヒノキ) ¥1,650(税込)

▼おおず歴史華回廊案内人 今峰さんが考える大洲の魅力

「景色も建物も歴史も素敵ですが、大洲の一番の魅力はやっぱり『人』ですね。すれ違う人はみんな挨拶してくれるし、のんびりとした大洲弁を聞いていると時間がゆっくり流れていくような気がします。これはもう本当にお金では買えない雰囲気だと思います」(今峰さん)

ラジオパーソナリティ やのひろみさん
外観も内観もゆっくり時間をかけて堪能してほしい歴史的建造物。その歴史や背景、煉瓦積みの特徴など「認定案内人」にガイドをしてもらいながら散策すると何倍も楽しくなりますね。 地元の作家さんの手仕事作品などもずらりと並んでいますので、ゆっくりとお買い物もお楽しみください。
おおず赤煉瓦館

INFORMATION
2『大洲城』~日本初!日本100名城の木造天守に泊まるキャッスルステイ


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
美しく佇む大洲のシンボル。これだけ精巧に復元することができたのは、建築図や木造雛形、写真などの貴重な資料を大洲の先人たちが残して守ってくれていたからに他ならない。その歳月と大洲人の想いを、この大洲城で感じていただきたいです!
街のシンボル『大洲城』は、鎌倉時代に築城されたと言われています。戦国時代から江戸時代にかけては築城名人・藤堂高虎をはじめとする歴代城主たちの手で近世城郭と城下町が形成され、大洲藩主・加藤氏の時代に最も栄えました。江戸時代から残る4棟の櫓は国の重要文化財で、日本100名城の一つに数えられています。

「大洲城の天守は木造で完全復元された日本最大の天守なんです」と胸を張るのは、大洲城の管理スタッフとして働く柿見陽介さんです。

柿見 陽介さん
明治時代に廃城となって取り壊された天守は、復元を願う多くの市民の声を受け、2004年にかつての姿を忠実に再現して完成しました。再建の背景には、明治初期に撮影された3枚の古写真と江戸時代の天守模型が奇跡的に残っていたことがあります。




大洲城には天守模型のレプリカが展示されている
城の構造に関する資料は、通常は軍事機密のために処分されますが、天守の修復を手掛けた大洲藩お抱えの棟梁が未来のためにと残していたのです。
「復元に携わった方によると、工事は江戸時代の大工との知恵比べだったそうですよ」と柿見さん。 天守再建プロジェクトは約10年に及ぶ大事業となり、総工費13億円のうち市民からの寄付が5億円にのぼりました。


最近では日本初の「城泊」が注目を集めています。
2020年にスタートした宿泊体験プログラム「キャッスルステイ」は、1日1組限定、2人で1泊132万円と高額ですが、これまでに国内外50組以上の宿泊客を迎えています。


「ただ泊まるだけでなくて、城主としてお迎えしています」と柿見さんが語るように、チェックイン時には約20名の甲冑武者が待ち受け、鳴り響く法螺貝と本物の火縄銃による祝砲でお出迎え。

大洲藩加藤家の記録に沿って、大洲伝統の神楽を目の前で観賞したり、当時の献立をアレンジして大洲自慢の食材をふんだんに使った料理を堪能したりという贅沢さで、宿泊者専用の入浴棟「御湯殿」もあります。
宿泊客の反応を聞くと、「みなさん、びっくりするくらい大絶賛ですね」と柿見さんは満面の笑みです。

▼大洲城スタッフ 柿見さんが考える大洲の魅力
「大洲は、この地の人々に代々受け継がれてきた長い歴史や財産がギュッと詰まっているのが面白いところだと思っています。これからも、大洲城などの文化財を活用することで持続可能なまちづくりに取り組みながら、大洲の伝統を未来に繋げていきたいですね」(柿見さん)


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
大洲城を後世に繋いでいくために、財のある方は(笑)城主気分で城にど〜んと泊まってください。唯一無二の体験です!そうでない大多数?の方は、城主気分で天守から大洲平野を見下ろしてください。大洲の旅のスタートはぜひ、ここから。
大洲城

INFORMATION
3『臥龍山荘』~日本の伝統建築の粋を集めた重要文化財の名建築


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
いつ足を運んでも、建築も庭も肱川も含めた佇まいそのものが絵になる場所。細部にわたるこだわりと遊び心が満載で、古の匠の技が光っています。「伊予小京都・大洲」と言われる所以は、この臥龍山荘の存在が大きいはず。数寄屋建築の傑作を、ぜひ大洲で。
かつて大洲藩主の下屋敷があった「臥龍淵」は、肱川で最も美しいと言われる景勝地。この地に広がる三千坪の山荘『臥龍山荘』は、明治時代に建てられた数寄屋造りの名建築で知られ、臥龍院をはじめとする3棟が国の重要文化財に指定、庭園を含む一帯が国の名勝に指定されています。

スペイン生まれの社会学者ディエゴ・コサ・フェルナンデスさんは、そんな『臥龍山荘』に魅せられ、2019年に大洲に移住してきました。
「水と都市の研究で初めて大洲に来て、自然と建築が互いにリスペクトしながら共存する姿に感動しました」というディエゴさんは、今、大洲市観光地域づくり法人「キタ・マネジメント」の建築文化研究所長として大洲の魅力を世界に発信しています。

ディエゴ・コサ・フェルナンデスさん
「ここは往年の大洲を象徴する遊び場なんです」とディエゴさんが語る『臥龍山荘』は、明治時代に木蝋貿易で財を成した豪商・河内寅次郎の別荘です。

当時は文明開化の真っただ中で、赤煉瓦造りの洋館建築など西洋の文化が大洲にも押し寄せていました。そんな中、日本の茶の湯文化をこよなく愛した寅次郎は、当代一流の建築家や名工たちをわざわざ京都から招き、こだわりと遊び心が詰まった数寄屋建築と日本庭園を10年がかりで作り上げたのです。



臥龍淵を見下ろす崖に建つ「不老庵」は、京都・清水寺のような「懸け造り」様式で、建物全体が船に見立てて造られています。

その天井は、隙間なく編み込まれた竹が緩やかな曲線を描き、晴れた朝には眼下の川面を照らす太陽の光を、夜には青白く輝く月光を反射するという緻密な計算が施されています。


粋なアイデアが詰まった名建築を「この建物は川と会話をしている」と表現するディエゴさんは、予め水害を想定した立地や構造など、建物と川がいつまでも共存できる設計などを説明しながら「臥龍山荘の素晴らしさについては、時間がある限りいくらでも話せますよ」と笑います。

理想の別荘づくりに情熱を捧げた河内寅次郎は、貿易を通じて多くの西洋人と交流し、西洋の技術や文化にも通じていました。能舞台として建てられたとされる「臥龍院」の屋根には、当時イギリスで流行していたトラス梁が用いられています。
「臥龍山荘は、この地の伝統を大切にしながら、外部からの新しいアイデアもたくさん取り入れているところが面白いですね」(ディエゴさん)

▼キタ・マネジメント 建築文化研究所長 ディエゴ・コサ・フェルナンデスさんが考える大洲の魅力
「大洲には、江戸時代のお城もあれば、明治時代の赤煉瓦もあるし、さらには昭和レトロな街並みもある。江戸から昭和まで、日本のいろんな歴史を同時に肌で感じられるところが、外国人にとっても魅力的だと思いますね」


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
ここの歴史や時代背景、建築物や庭園の解説、太陽や月の光をも計算され尽くした空間設計を堪能するには、大洲愛あふれる「認定案内人」にガイドをしてもらいながら散策するのがオススメ。地元にいるやのでも、案内人さんによって毎回新しい発見があります。
臥龍山荘

INFORMATION

4『村田文福老舗』~大洲藩主が愛した400年変わらぬ「月窓餅」


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
400年愛され続けてきたお菓子が、今も味わえる!そのこと自体が奇跡です。純国産わらび粉、抜群の風味香る青大豆きな粉……口の中でほどけていきます。14代目がひとつひとつ手の感覚だけで包んでいく、その技が代々受け継がれているからこその味。
大洲名物「月窓餅」は、大洲藩2代藩主・加藤泰興がこよなく愛した和菓子です。伝統の味と製法は、大洲藩御用菓子司を努めていた寛政元年創業『村田文福老舗』によって、代々守り継がれています。

「作り方は400年以上何も変わっていませんよ。変わったのは、炭がガスになったくらいですね」と話すのは、14代目主人の村田耕一さん。

純国産のわらび餅でこし餡を包み、風味豊かな青大豆のきな粉をたっぷりまぶした餅菓子は、口の中でふわりととろける繊細な食感と素朴な甘さが特長です。


練りたての柔らかいわらび餅をしゃもじとヘラで切り分けながら、あっという間に餡を包んで丸める様子はまさに職人技です。1個ずつの包装もすべて村田さん一家が手作業で行っているため、1日で作れる量はせいぜい500個から1000個ほど。


「真夜中までずっとやっても1日2000個くらいが限界かな」という村田さんは、話しながらも一切手を休めることなく作り続けます。
実は、過去には機械化を検討したこともあったと言います。 「メーカーの社員がやってきて、試験させてほしいって言って何度もやったんですよ。で、どうにかいけるかなと思って、何百万も出して機械を買ったんです」と笑う村田さんの目線の先には、シートを被ったまま眠っている機械がありました。

練り上げたばかりのわらび餅は、どろりと垂れるほどに粘度が高いため、どうやら機械のシャッターではうまく切れなかったようです。
「数回試してみたけどやっぱりダメだと。すぐに手作業に戻りましたよ。機械を準備したり片づけたりする時間ももったいないしね」(村田さん)

この時に思い出したのが、先代の教えでした。
「親父はずっと“これ以上大きくするな、自分でできる範囲でやれ”と言ってまして。今となっては、この言葉を守っててよかったと思います。大きくしてたら、コロナの時に潰れてたかもしれないしね」
そう語る村田さんの隣では、15代目を継ぐ息子・真嗣さんが作りたての『月窓餅』を1つずつ包装しながら、父の言葉に笑顔でうなずいていました。

▼村田文福老舗 村田耕一さんが考える大洲の魅力
「昔ながらの素朴な田舎っていうところかな。この街には近代的なものがあまりないから、そういうところが人気なのかもしれないですね。うちもずっと変わらずにやっていきますよ」


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
機械化することなく、ひとつひとつ手の感覚だけで包んでいくこの14代目の姿も美しい。すでに15代目も技を継承し、創業1624年からの歴史はまだまだ大切に紡がれていきます。大洲に足を運ばれたすべての人に味わってほしい逸品!
村田文福老舗

INFORMATION

5『冨永松栄堂』~伝統を守りながら革新に挑む大洲名物「志ぐれ」の老舗


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
大洲には「志ぐれ」のお店がいくつもあり、そのお店ごとに味も食感も異なります。いろいろ巡って「推し志ぐれ」を見つけて欲しいなぁと思いますが、ここの志ぐれは、最初の歯を入れる感覚がサクッとしてて好き。時代に合わせて食べやすく形状も変化し、個包装されて手土産にも喜ばれます。
大洲市民なら誰もが食べたことのある「志ぐれ」は、もともと江戸時代に大洲藩江戸屋敷内の秘伝菓子として誕生した銘菓です。
小豆・米粉・餅粉・砂糖で作った生地を蒸し上げる、赤飯のように素朴な甘さのお菓子を、明治時代になって世に広めたのが『冨永松栄堂』の初代・冨永八太郎です。
「志ぐれは、小豆の粒を通り雨のように降る時雨に見立て名づけられたと聞いております」と語るのは、今年で創業150年を迎えた『冨永松栄堂』5代目の冨永晃可さんです。

明治・大正時代の大福帳を見ると、「志ぐれ」は、製糸業などで栄えた大洲の商家から茶菓子として愛されていたことが分かります。また、創業当時の製法を詳細に記したレシピも代々大切に残されています。


しかし、冨永さんは「単に伝統を守るのではなく、時代に合わせて度々改良しています。私の代でもかなり変わりましたよ」と語ります。
「志ぐれ」の主役である小豆は、北海道産の厳選された豆を使用します。冨永さんは、独特の食感を引き出すために、粒を壊さない鹿の子用とこしあん用の2つの釜で2種類の煮豆を作って混ぜ合わせるというアイデアを取り入れました。

小豆をたっぷり使った生地は、全長10mのセイロで蒸し上げます。
「和菓子は蒸し時間が30秒違うだけで全く別物になります」という冨永さんは、高圧・高温の一次蒸気をわざわざ水にくぐらせることで、優しい蒸気でしっとりと蒸し上げるという製法を考案しました。


大きさについても、1本110gだったものを、手を汚さずに食べられるようにと40gの一口サイズに改良。甘さを抑えつつも、包装を見直すことで日持ちを長くしました。



こうして長い伝統の上に代々の知恵と工夫を重ねた「志ぐれ」は、生感覚のみずみずしさがありながら、さっくりとした食感の大洲銘菓として、高く評価されています。
また、愛媛県産の栗を無漂白で加工した「栗志ぐれ」や、無農薬抹茶を使った「抹茶志ぐれ」なども登場し、茶席の主菓子としても使われています。

▼冨永松栄堂 冨永晃可さんが考える大洲の魅力
「日本人がだんだん豊かになって、量より質を求める時代になっていると思います。私たちは、伝統を守りながら新しいものに挑戦して、志ぐれの背景にある大洲という土地の歴史や人の物語も伝えられたら嬉しいですね」


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
明治時代や大正時代の台帳をはじめとした貴重な資料は、志保町店の店内に展示されています。こういうのをちゃんと保存しているってスゴイ!先人たちが書きつけた営みの証を「時代の手触り」として視覚で味わってから、想いを馳せてお召し上がりいただきたい逸品です。
有限会社 冨永松栄堂

INFORMATION

6『臥龍醸造 GARYU BREWING』~解体を免れた製糸場の繭倉庫で醸す唯一無二のクラフトビール


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
何年も使ってない建物だったら、普通だったら壊しますよね。でも、ここ大洲では、大正時代から残る製糸繭倉庫をそのまま保存していた……そのことに震えます。その場所で新しい魅力が生み出されている。それもハンディキャップのある地元の人の就労機会になっているなんて。大洲の人の優しさが、一杯のビールに詰まっています。
南予唯一のクラフトビール醸造所『臥龍醸造 GARYU BREWING』は、古い街並みが残る肱川南岸の一角にあります。
赤煉瓦造りのレトロな建物は、もともと明治39年に建てられた製糸工場の繭倉庫です。その後、すっかり寂れた建物は解体の危機を迎えましたが、その頃に大洲で古い街並みを観光資源として再生する活動が始まります。そこで手を挙げたのが、大洲市に本社を構える食品容器メーカーの株式会社アライでした。


「もともと大洲を盛り上げるためにクラフトビールを造りたいと思っていたので、ちょうどいいタイミングでした」と話すのは、『臥龍醸造』を立ち上げた株式会社アライの新井一成さんです。

ビール造りをゼロから学ぶために全国を巡った新井さんは、東京・両国でブルワリーを運営する著名な醸造家との出会いにも恵まれ、2022年からいよいよ大洲でのクラフトビール造りが始まりました。
開業からわずか3年足らずで、醸造したクラフトビールはすでに20種類を超え、そのうちの約半数がIBC(インターナショナルビアカップ)などの国際コンクールで受賞するという快挙を遂げています。


「ビールをきっかけに、いろんな人に大洲に来てもらいたいんですよ」という新井さんがこだわるのは、大洲でしか飲めない唯一無二のクラフトビールです。
人気の「大洲シルクエール」は、醸造所の建物のルーツである製糸産業にちなみ、希少な大洲産のシルクパウダーを使ったなめらかでさわやかな味わいのエールビールで、IBC2023では見事金賞に輝いています。

2024年春に登場したのが、大洲市長浜産のキウイを使った「長浜キウイIPA」です。
「愛媛県というと誰もがみかんを思い浮かべると思いますが、実はキウイの生産量が日本一なんです」と胸を張る新井さん。通常は出荷できない規格外のキウイを使用することで、地元農家の支援にもつながると言います。

『臥龍醸造』では障害のある方に就労の場を提供し、クラフトビールの瓶詰作業やラベル貼りなどの作業を任せています。
「ビール醸造もまちおこしも障害のある方の就労支援も、私たちにとっては同じ流れなんです。障害のある方には、地元の誇りになるようなビールづくりを支えてもらいながら、事業が大きくなれば町も元気になるし、雇用も拡大できますから」(新井さん)

▼株式会社アライ 臥龍醸造 新井一成さんが考える大洲の魅力


ラジオパーソナリティ やのひろみさん
お土産で手にとって欲しいのはもちろん、やの的には絶対「生」で、この場所で召し上がっていただきたい!この繭倉庫の空気感を、ソファーに深く身を沈めて堪能するひとときが至福です。呑み比べもクラフトビールならではの楽しさ。イチオシは、やっぱり大洲のシルクパウダー入り「大洲シルクエール」!
臥龍醸造

INFORMATION
最後にやのひろみさんからメッセージ
改めて大洲の街を巡って、この街が世界No.1の持続可能な観光地に選ばれた理由が、よくわかりました。みんなが大洲の歴史や財産を大切にしながら、どうすればその魅力をより多くの人々に伝えられるか、未来まで繋いでいけるかを、それぞれの立場で真剣に考えているんですね。
だから、大洲の街を歩いていると、歴史的な美しい風景だけでなく、人の“愛情”を感じます。それが今回改めて発見した大洲の魅力ですね。
皆さんもまずは大洲に来てみてください。きっと虜になるはずですよ。

大洲市認定の名産品が勢ぞろい 大洲ええモンセレクション
肱川が流れる大洲市には、あたたかな人と気候風土が生み出す「ええモン(いいもの)」がたくさんあります。
大洲市では、市内で製造または加工される逸品を「大洲ええモンセレクション」として認定し、その魅力を全国に発信しています。
「大洲ええモンセレクション」WEBサイトでは、今回の旅で訪ねた村田文福老舗の「月窓餅」や冨永松栄堂の「ひとくち生志ぐれ」、臥龍醸造の「大洲シルクエール」などの逸品を購入できます。
旅の予習として、まずはお気に入りの「ええモン」を探してみてはいかがですか?



撮影・取材協力 大洲市
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