美しく緻密につむぐ
やさしくて深い“あい”




つづいて矢吹さんがやってきたのは、久留米市の中心部にある「西原糸店」です。店内には伝統工芸品である久留米絣(くるめかすり)を、現代にフィットするようデザインしたアパレル商品や小物類が多数ならんでいます。


「実は私、久留米絣を着てランウェイを歩いたことがあるので、もちろん知っていたんですが、こんなに色々な商品が作られていることは知りませんでした。オシャレだしかわいい」と店内を見渡す矢吹さん。そこへ「お気に入りの商品はありましたか?」と声をかけてくれたのは、2人目のロコレコさん・森久さんです。

森さんは久留米市生まれの久留米市育ち。運送会社で勤務するかたわら江戸時代や明治時代の古地図を使って街歩きガイドをしているそうです。そんな久留米の文化や久留米の歴史を愛する森さんがレコしてくれるのは、200年を超える歴史を持つ“久留米絣”を体感できる場所なんだとか。


森さんの案内でやってきたのは、豊かな自然の中にたたずむ久留米絣工房「藍生庵(らんせいあん)」です。日本の木綿絣の中でも、群を抜く美しさを誇ると言われている久留米絣は歴史的・芸術的価値が高く評価され、1957年には国の重要無形文化財に指定されています。


むかえてくれたのは久留米絣の技術を受けつぐ松枝家7代目・松枝崇弘さんです。「藍生庵」は、機械織りや化学染料を一切使用しない久留米市内唯一の手織り工房。伝統技法を守りながら新しいデザインの創出にも力を入れており、着物はもちろん、名刺入れなどの小物やストールなど、様々な作品をうみだしています。ストールを試着させてもらった矢吹さん「すごくやわらかくて繊細でデザインも美しいです。すべて手づくりとは信じられない」と感銘を受けていました。


久留米絣の特徴は柄の部分が白くなっていること。柄を生み出すために、先に糸の束を縛った絣括り(かすりくくり)を染色します。このとき縛っていた所は染まらずに白いまま残るため、この部分が模様として浮かび上がるというしくみになっているそうです。また天然の藍を発酵させて糸染めを行うのも特徴で色の濃淡は染める回数で決まるんだとか。

「糸を藍染めする段階で模様を既に考えてあって、染める場所、染めない場所が計算されていて、それらを織りの段階で表現していくんです」と松枝さん。「本当に総合芸術なんですよ。緻密で繊細な作業です。こちらでは、伝統的な織り機を使っているんですが、奈子さんにぜひ体験してほしいんです」と森さん。そこで、まずは、松枝さんの実演指導です。「手も足も使って…これ難易度高くないですか…」と矢吹さん。

松枝さんに教わりながら実際に体験してみます。「ここまでの仕事の成果が出るところ。一生懸命やります!」ともくもくと作業に取り組みます。作業すること数分。「手順の飲み込みが早いですよね」と森さん。松枝さんも「慣れるのも早いしなにより上手です」と才能をほめられました。「私は一部を体験しただけですが、とても手間ひまがかかっていて。すごく良い経験になりました」と伝統文化にふれたのでした。
西原糸店

藍生庵(らんせいあん)




森 久さん
Profile
着地型観光プロジェクト「久留米まち旅博覧会」で「ブラ★モリ」という街歩きの企画を担当している。
MOVIE
200年の歴史をもつ久留米絣
久留米っ子のご褒美!
家族で食べるソウルフード
